研究課題/領域番号 |
12301020
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
林 忠行 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90156448)
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研究分担者 |
佐原 徹哉 東京都立大学, 人文学部, 助手 (70254125)
北川 誠一 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (50001813)
宇山 智彦 北海道大学, スラブ研究センター, 助教授 (40281852)
松里 公孝 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (20240640)
篠原 琢 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (20251564)
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キーワード | 東欧 / 中央ユーラシア / 近代 / ネイション / 国民 / 民族 / エスニシティ |
研究概要 |
本年度は、2000年11月25〜26日に第1回研究会が北海道大学スラブ研究センターで開催された。研究会では、諸分析概念が東欧・中央ユーラシア地域での問題に即して再検討され、あわせて具体的な事例に関する報告が行われた。報告は近日中に刊行予定である。以下は報告の骨子である。 歴史学、政治学の分野では、佐原徹哉がnation、ethonie、ethnicity、ethnic group、communityなどの諸概念を整理し、1860〜70年代バルカンの都市の事例から、「コミュニティが主体的にネイションとの関係を選択する」という指摘をおこなった。宇山智彦は、「民族を虚構と見なして思考停止するのではなく」、「あらゆる共同体の被構築性・被想像性を前提とした上で、民族・ネイションの特色を考えるべきだ」とし、行き過ぎた本質主義批判を批判した。月村太郎は、政治空間の領域的側面とメンバーシップ的側面に着目し、ネイション建設もこのふたつの次元から検討すべきだとした上で、その議論の旧ユーゴでの適用可能性を示した。小沢明弘は、国民国家形成という契機とは切り離されたエトノス:「民族」とネイション:「国民」という概念を示し、「国民」「民族」「地域」は実体ではなく、国民国家体系、国民社会、歴史的地域などにまつわる問題を索出する「方法」であるとした。 また、民族学、人類学の分野では、栗原成郎が、ボスニアとセルビアの叙事詩に関する19世紀の文献の検討をとおして、セルビアでは「コソヴォの戦い」が集団意識の上で強い力を持ったことを紹介し、坂井弘紀は、中央ユーラシアの叙事詩「ノガイ体系」の分析によって、そこで謳われた英雄がはじめは「民族」とは結びつくものでなかったが、時代を追うに従ってその関係が強調されるようになった、という指摘を行った。また、松前萌は、ブルガリア系言語を使用する「ポマク」を取りあげ、その自己認識と、「ポマク」に対する他者認識を国勢調査や住民登録などをとおして歴史的に分析した。渡邊日日は「全的共同体」の存在を前提とする研究を批判する立場から、ブリヤート共和国での1998年国会選挙の微視的観察をとおして、「氏族」による投票行動の差が曖昧なものであるという指摘をおこなった。
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