研究分担者 |
松田 博貴 熊本大学, 理学部, 助教授 (80274687)
松田 伸也 琉球大学, 教育学部, 助教授 (30157317)
大村 明雄 金沢大学, 理学部, 教授 (70019488)
杉原 薫 福岡大学, 理学部, 助手 (90320275)
山田 努 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50321972)
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研究概要 |
今年度は,鹿児島県喜界島に発達する4面の隆起サンゴ礁段丘から採取したハマサンゴ群体の酸素同位体比に基づいて,それらの生息当時の年平均表層海水温を算出するとともに,続成によって炭素・酸素同位体比記録がどのように改変されるかについて検討した.なお,4つの段丘の形成年代は陸側から8.1〜6.3,6.3〜4.1,4.1〜3.1,3.1〜1.4kaであり,化石サンゴは採集された段丘面の形成年代の範囲に生息していたと考えた. 続成作用:続成作用によって生じた方解石の含有量と炭素・酸素同位体組成の関係を検討した.その結果,炭素同位体比-酸素同位体比のクロスプロット上で,方解石を含む試料の炭素・酸素同位体比は方解石を含まない試料に比べてばらつきが大きく,この傾向は炭素同位体比でより顕著であることが明らかとなった.また,陸上での続成作用により生成する方解石セメントは,サンゴが形成するアラレイシ骨格と類似した炭素・酸素同位体緯成であり,特に両者の酸素同位体比は近い値にあることが判明した.このような方解石の存在は,サンゴ骨格本来の同位体組成をゆがめるものであり,サンゴ骨格の同位体組成を利用した古環境解析では,方解石を全く含まないサンゴ骨格のみを用いる必要がある. 古水温:現在の喜界島周辺の年平均表層海水温は25.4℃である.8.1〜6.3kaの平均海水温は.現在と同じかあるいはわずかに低く見積もられた.また,6.3〜3.1kaには平均海水温は現在よりも約3℃低く,3.1〜1.4kaには現在よりも約1℃弱低かったという結果が得られた.しかし,同一群体から得た複数の骨格部位を用いて算出した古水温は,最大で約5℃のばらつきをもつ.このことは,古水温を算出する際,ある化石サンゴ骨格の任意の部位の酸素同位体比から古水温を算出しても,その値には大きな誤差が伴うものであることを意味する.
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