研究分担者 |
松田 博貴 熊本大学, 理学部, 助教授 (80274687)
松田 伸也 琉球大学, 教育学部, 助教授 (30157317)
大村 明雄 金沢大学, 理学部, 教授 (70019488)
杉原 薫 福岡大学, 理学部, 助手 (90320275)
山田 努 東北大学, 総合学術博物館, 助手 (50321972)
|
研究概要 |
平成14年度は,活発なフィールドワークと室内作業を行ない,基礎的データの蓄積を進めると同時に,これまでの成果をまとめた.中でも,今年度の大きな成果は,以下の2項である. 鹿児島県喜界島の完新世サンゴ礁段丘の各面から,続成作用による影響がないと判断した化石サンゴを2群体ずつ選び,骨格伸長に伴う同位体非平衡の補正をした上で,年平均表層海水温を算出した.その結果,現在の喜界島周辺の年平均表層海水温(25.4℃)に対し,8.1〜6.3kaには現在と同じかあるいはわずかに低い,6.3〜3.1kaには現在よりも約3℃低い,3.1〜1.4kaには現在よりも約1℃弱低いという海水温変動が推定された.しかし,同一群体の同時期に形成されたと考えられる骨格部位の間ですら最大で約5℃のばらつき持っていた. サンゴ礁の分布域の北縁付近にある喜界島の完新世サンゴの骨格記録との比較のために,より低緯度にあるグアム島の現世サンゴの骨格記録を検討した.Nino3.4海域の水温偏差に基づいて,Guamの気候はエルニーニョ期間・ラニーニャ期間・通常期間に区分される.酸素同位体比-海水温の相関は,-0.60(通常時),-0.76(エルニーニョ時),-0.45(ラニーニャ時)となり,期間の間で差が認められた.この原因は,次のような理由による.エルニーニョ時にはWPWP(西太平洋暖水塊)が東進し,WPWPを取り巻く低温水が北西太平洋域から南下するため,グアムにおける冬季の水温が27℃以下に低下する.逆にラニーニャ時にはWPWPの西進により,冬季水温が高くなる(28℃以上).このような海洋環境の差異によってグアム周辺海域の水温の年較差に違いが生じ,その結果,サンゴ骨格の酸素同位体比に及ぼす海水酸素同位体比変化の影響が相対的に変化し,各期間の相関における有意な差として現出する. これらの成果は,論文として投稿中である.
|