研究概要 |
地層の累重様式のダイナミクスを明らかにするため,100年以下の誤差で年代が求められる放射性炭素による年代測定法を完新統に適用した. 本年度は,わが国における典型的な浜堤列平野である仙台平野で昨年度掘削して得られたコア5本のうち,年代測定が行われていなかった2本のコアについて新たに26個の年代値を求めた.その結果,仙台平野では過去1700年間に海岸線が1400mも海側に前進したことが明らかになった.しかもその速度は一定ではなく,1700年前から1550年前までは年間に2.7mという速度で前進していたことが分かった.1550年前から現在までが年平均65cmであるから,その期間の前進がいかに速かったかがわかる.また,1700年前ころの海水準は現在よりも2mほど低かったことも分かった.この時期はわが国では"弥生の海退"と呼ばれる低海面期にあたる.さらに古い時期の海面がそれより高かったことを捉えることができれば,これは弥生の海退を高精度で実証した初めての例となる. 仙台平野で得られたコアは,海浜・外浜システムを代表するサクセッションで,すでに明らかにした千葉県九十九里浜平野のものと比較することで,高精度の海浜・外浜サクセションのダイナミックな地層形成モデルをつくることができる.海浜・外浜サクセッションこそ地層に最も多くみられるもので,シークェンス層序学の堆積モデルの基本がそれでつくられているからである. さらに,本年度では京都府の舞鶴地域の砂嘴システムの貴重なコア試料に対する年代値を得ることができ,その地層発達様式例を明らかにすることができた.
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