研究概要 |
地層の累重様式のダイナミクスを解明するため,100年程度の誤差で年代が求められる放射性炭素年代測定をわが国の完新統に適用した.欧米の完新統が未だ海進期にあるのに対して,わが国の完新統は,後氷期の海進と縄文時代以後の海退を経験した世界的に貴重な地層である.今年度は次のような成果が得られた. 1.仙台平野で,海岸から海岸線に直交する方向の約6kmの範囲で行われた8本(今年度3本)のボーリングコアの解析から,典型的な海浜-外浜システムでの地層の累重様式を初めて知ることができた.そこでは,海進期には地層はわずかしか堆積せず,海退期に急激に前進して重なっている.海進期の地層の保存は,古水深だけでなく,底質の性質が重要であることが,九十九里浜での結果との比較からわかった. 2.海浜堆積物を認定した結果,仙台平野では1700年前ころ海水準が,現在よりも2m程低かっつたことがわかった.この時期は"弥生の海退"と呼ばれる低海面期で,この海退を高精度で実証できた初めての事例となった. 3.京都府舞鶴地域で得られたボーリングコアの解析から,これまでに報告例のない砂嘴システムでの地層の発達様式を明らかにすることができた.砂嘴システムは海進期に活動的であることがわかった. 4.3年間の成果を統合して地層発達をまとめてみると,堆積システム毎に特徴的な堆積様式があることがわかった.このことは,ここで得られた地層累重様式のダイナミックに関する成果が,シークェンス層序学を通して過去の地層.に適用できることを示している.
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