研究概要 |
本年は,当科研費の初年度であるので,購入備品のセットアップと方法論の確立に力を注いだ.購入備品であるレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル(以下DAC)装置については,試料加熱用のレーザーに,出力の安定性に優れているYLFレーザーを採用した.白金箔を用いた加熱調整では予定していた加熱性能を確認したが,DACに試料を挿入した状態での加熱性能の調整は,まだ完了してない.測温システムについては,ほぼリアルタイムで加熱温度を出すことおよび加熱中の試料のほぼ正確な温度分布を出すことが,できるようになった. 分析電顕による下部マントル物質の解析法については,超高圧物質の電顕用薄膜作成時に元素の選択的な損失を生じるイオン研磨法に代わって,ダイヤモンドナイフを用いたウルトラミクロトーム法による薄膜作成を試みた.その結果,レーザー加熱DACで合成した粉末試料について,厚さ60-80ナノメーターの薄膜を削り取ることができた.しかし,それらの薄膜についての組成分析では,まだ十分信頼おける値が得られていない. 下部マントル物質についての具体的な成果としては,東大物性研の八木研究室との共同研究で,ダイオプサイド(Di)-ヘデンバージャイト(Hd)系についての20-40GPa,1900-2300Kでのレーザー加熱DAC実験で,Di100Hd0-Di85Hd15では(Mg,Fe)-ペロブスカイトとCa-ペロブスカイトの2相が,Di85Hd15-Di55Hd45では上記2種のペロブスカイトおよびマグネシオウスタイトとスティショバイトの4相が,そしてDi55Hd45-DiOHd100ではCa-ペロブスカイトとマグネシオウスタイトおよびスティショバイトの3相が,それぞれ安定な相として共存することが分かった.
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