研究概要 |
本年度は当科研費の2年目であり、昨年度購入したYLFレーザー加熱によるダイヤモンドアンビル装置(DAC)の調整と、分析透過電顕(ATEM)による超高圧物質の解析法の改良に取り組むとともに、具体的なテーマの実験も進めた。YLFレーザーはドーナッツモードで、最高出力は約50Wであった。ビーム径は、ビームエキスパンダーの倍率を2倍にした場合、約20〜30μmに絞れた。電子冷却式(温度-30度)のCCD検出器を用いた測温システムで、ほぼリアルタイムの測温ができたが、それら温度の精度についてはなお検討中である。 分析透過電顕による超高圧物質の解析では、電顕用薄膜作成については薄膜表層からの元素の選択的損失が生じるイオン研磨の代わりに、樹脂に埋め込んだ試料をダイヤモンドナイフで極めて薄く削り取るウルトラミクロトーム法を試みた。これにより、レーザー加熱DAC試料を約30nmの薄さまで削ることができ、分析値もほぼ理想化学式に近い値が得られた。 具体的なテーマとして、下部マントルにおける(Mg,Fe)-およびCa-ペロブスカイトの共存関係をみるため、CaMgSi_2O_6-CaFeSi_2O_6系輝石を出発物質に用いて、30-80GPa、1700-2200Kでレーザー加熱DACにより高温高圧合成し、試料を放射光X線と分析電顕で観察して、高圧下の相関係と、(Mg,Fe)-およびCa-ペロブスカイトの固溶関係を調べた。その結果、(Mg,Fe)-ペロブスカイト中には、Caが上記条件で1-2モル%程度しか入らず、Fe/Mg比が増大するとCaの固溶量はむしろ減少する傾向にあった。それに対し、Ca-ペロブスカイト中への(Mg,Fe)固溶量は30GPaでFeがないと4モル%位だが、Feが増えると20モル%位に増加し、さらに圧力が70GPaになると固溶量は30モル%位まで増加する傾向が認められた。
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