研究概要 |
本研究では,マグマの上昇および噴火におけるマグマの減圧・脱ガス・急冷過程において,マグマの発泡,結晶作用によるメルトの組成変化が起こることに衆目氏,岩石学的にマグマの挙動を解読することを目的としている.これら岩石学的挙動と同時に,岩石の破壊現象が噴火様式を大きく左右することがわかっており,噴出物の破砕過程を解読するためにレーザ粒子径分布測定装置を導入した. 2000年に噴火した三宅島の噴出物について岩石学的・堆積学的解析を行った.三宅島の山頂からの噴出物は8月初旬までの玄武岩質安山岩マグマと8月中旬以降の斑晶質の玄武岩マグマが噴火に関与した.マグマの酸素分圧を見積もる方法をX線マイクロプロ-ブのS-Kαの波長シフトを利用して行い,NN0に近いことを見積もった.2種類の組成が異なるマグマのメルトインクルージョンには大きな組成の差が認められなかった.また,粒度分析の結果,マグマ水蒸気爆発の噴出物は破砕度に対して分散度が小さく,水が関与した典型的な破砕現象を示した. 有珠山2000年噴火では2段階の発泡過程が提案されたが,結晶作用は1度しか記録されておらず,発泡の程度と無関係に一定の結晶度であることが示され,結晶作用の遅延が確認された. 雲仙普賢岳噴火では,石基の結晶度や発泡度から推定されるマグマの脱ガスの割合が,噴火時に観測された低周波地震の発生深度と相関性があるため,低周波地震が脱ガスに伴う発泡マグマの破砕やその時に起こるガスの逸脱に関係しているモデルが提案された. 来年度は最終年度に当たるため,三宅島,有珠山,普賢岳の噴火に伴うマグマ過程についてのモデル化を行う.
|