研究概要 |
本年度は,生命一鉱物のミクロ相互作用の地球史・環境・進化へのインパクトの課題の最終年度として、特に論文化に力をいれた.具体的には,バンクラデシュにおける地下水砒素汚染にかかわる微生物-鉱物相互,に関する,論文を4編仕上げた.うち,3編は国際誌である.さらに,印刷中が1編投稿準備中の論文が,原著と総説で各1編づつある.またフランボイダルパイライトの特異な内部構造,の発見についても国際誌に掲載された.地下水ヒ素汚染の問題については,これらを通じて,ヒ素の濃集過程,溶出過程,汚染水浄化の3つのそれぞれで,特徴的な点がクローズアップされ,その中で微生物との植作用が重要であることが,実験的に明らかにできた.また,この水質,微生物活動の結果,として重炭酸イオンの重要性が指摘できる.これはあらたな視点である.これらの仕事は,バングラデシュからの留学生,ホサイン アナワール君の貢献も大きく,この仕事をまとめて,彼の博士論文ともなった.浄化の過程としてサンドフィルターを使ったものでは,その表面の微生物膜と沈励を電子顕鵬で確認し、この沈澱物が単純な鉄水酸化物ではないことを明らかにできた.また,地下水中の窒素の同位体の研究からは,この窒素が単純に農薬起源といえないことを示した.が,なお,分析数をふやしての検討が必要である.また,これまでの代表者の電子顕微鏡を駆使しての研究に対して,日本鉱物学会賞が授与された.微生物風化,進化・地球史とのかかわりについては,なお,次のステップへすすむべく課題はのこされていて,今後の展開が期待される.最終年度として,これまでの成果をまとめ,冊子体の報告書になる予定である.
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