研究概要 |
(1)エポキシアルコールのC-2位選択的アルキル化およびアルキニル化反応の開発 2,3-エポキシアルコールのC-2位選択的炭素-炭素結合形成反応は合成的に非常に有用であるにもかわらず,これまで有機銅試薬によるアルキル化反応を除いて全く知られていない。申請者らは,独自にアート型アルミニウム反応剤を用いる方法論を考案し,エポキシアルコールのC-2位選択的かつ立体特異的アルキル化およびアルキニル化反応を開発した。新たに開発した手法は,従来の有機銅試薬よりもはるかに高い立体選択性ならびに化学収率で生成物を与えることが判明した。これらの成果を現在アメリカ化学会に投稿中である。 (2)シスおよびトランスエポキシドの立体特異的相互変換 これまで困難とされていた「シスおよびトランスエポキシドの立体特異的相互変換」をエポキシスルフィドを用い,二重立体反転を伴うハロゲン置換反応を設計することにより高選択的かつ高効率的に行えることを発見した。本法は天然物合成を含む有機合成に有力な手法を提供するものと考えられる。 (3)海洋産天然物ミサキノライドの不斉全合成研究 強力な抗癌活性を有する海産天然物ミサキノライドの不斉全合成研究を展開し,ピラン環部および10個の不斉中心を含む重要中間体の高立体選択的合成に成功した。これらの成果をイギリス化学会誌および日本化学会誌に発表した。 (4)海洋産天然物サイトフィシンの不斉全合成研究 強力な抗癌活性を示す海産天然物サイトフィシンの全合成研究を行い,合成上の最重要課題となるジヒドロピラン環部およびポリプロピオネート鎖の立体選択的合成に成功した。
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