研究概要 |
多不斉中心を有する鎖状有機分子を高立体選択的に作り分ける精密有機合成手法の開発は現代有機化学の重要なテーマである。本研究はエポキシドの求核置換反応を基軸とし,新しい概念に基づく立体特異的鎖状有機分子構築法を開発するとともに,それらを生理活性天然物の全合成へ応用展開し,有機合成に新局面を拓くことを目的として行われた。 その結果,本基盤研究費が交付された平成12年~14年度の3年間に以下の研究成果を得た。 (1)2,3-エポキシアルコールのC2位選択的アルキル化反応の開発 (2)有機アルミニウムートリアルキルシリルトリフラートの組み合わせによるエポキシドの立体特異的アルキル化-シリル化反応の開発 (3)γ,δ-エポキシ-α,β-不飽和エステル系の立体選択的S_N2'反応の開発 (4)二重立体反転を伴う立体特異的鎖状有機分子構築法の開発 (5)ホウ素キレートのエンド開環反応を機軸とする2,3-エポキシアルコールのC2位選択的求核置換反応の開発 また特異な生物活性と化学構造を有する以下の天然物の全合成を達成した。 (1)トウモロコシの宿主特異的病原毒素PM-Toxin A及びBの不斉全合成 (2)高歪み天然物インゲノールの全合成 (3)強力な抗癌活性を示す海産天然物サイトファイシンCの立体選択的全合成 (4)イオノフォアー抗生物質ジンコフォリンの不斉全合成
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