研究概要 |
本研究では、9-位に臭素原子(または、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基)を有し、1,8-位に供与性配位原子(酸素、窒素、リン)を有する新規アントラセン骨格の合成に初めて成功し、OMe基を配位子とする5配位超原子価炭素化合物の合成に初めて成功した。X線解析の結果、それぞれのOMe基の酸素O1,O2のlone pairは中心炭素C19の空のp軌道に相互作用していると考えられ、C19周りのgeometryは少し歪んだ三方両錐(TBP)構造となっていることがわかった。2つのC-O(C19-O1,C19-O2)の距離はほぼ同じ(2.43(1)Å,2.45(1)Å)であり、C-O共有結合距離(1.43Å)より長いがvan der Waals半径の和(3.25Å)よりは短いことから、中心炭素と2つの酸素原子間には、明らかに求引的相互作用が存在すると結論できた。また、この相互作用の存在は、東京都立大の永瀬先生による密度汎関数法(DFT)のAIM解析により確認した。さらに中心にホウ素を導入した5配位ホウ素化合物の合成にも成功した。
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