研究概要 |
1)超原子価第2周期典型元素化合物の構造における置換基効果 これまでの研究で合成に成功した配位子1,8-ジメトキシ-9-ブロモアントラセンをn-BuLiと反応させて発生させた対応するリチオ体をそれぞれ種々のホウ素試剤と反応させて3種類のホウ素誘導体[B(OMe)2,BF2,BC12]を合成し、その構造を明らかにすることができた。B(OMe)2誘導体に関しては既に報告した超原子価5配位炭素のC-0距離[av.2.44(1)Å]と同様のB-O距離[av.2.44Å]を有しているほぼ対称な5配位構造であった。BF2誘導体はB(OMe)2誘導体と同様の対称な構造であったが、B-0距離[av.2.294Å]の明らかな短縮が観測でき、B(OMe)2誘導体に比べてtightな5配位構造であった。BC12誘導体はB(OMe)2誘導体、BF2誘導体とは大きく異なり、一つの酸素原子からのみ配位を受けた非対称な4配位ボラート構造であった。このようにホウ素に直接結合した置換基によりlooseな5配位、tightな5配位、4配位構造の間で変化が見られた。 2)窒素、リン原子を有する新規平面性3座配位子の合成とその応用 これまでにその剛直な骨格の有用性を示すことのできた酸素系配位子の配位原子を15族の窒素、リンに変換した配位子の合成に成功した。これらの配位子にcatecholateboryl基を導入したホウ素誘導体を合成したところいずれも非対称な4配位構造をとることが明らかになった。これらの誘導体の低温における1HNMRスペクトルはいずれも対称な構造を示し、合成した配位子が遷移状態の5配位構造を安定化していることを示していた。また、これらの配位子には遷移金属を導入することも可能であり、10族の遷移金属(Ni, Pd)等を導入した錯体を合成し、その構造を明らかにすることができた。いずれも平面4配位構造を有しており、中でもリン配位子を持つPd錯体はHeck反応の触媒として応用可能であった。
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