研究課題
常緑性、落葉性に関するKikuzawa(1991)モデルを基にして、年内の温度変化の度合いなどの影響を取り入れるために、モデルの改良を試みた。環境条件のモデルへの取り込みとしては、年平均気温とその月別変動を二次関数で近似した。植物の温度反応としては温度-光合成カーブをコサインカーブによって近似した。これらの他に光合成速度の葉齢にともなう変化曲線、葉の構成コスト、最大光合成速度等をモデル化した。これらを組み入れたモデルを現実の環境条件下でシミュレートすることを試みている。現実の光合成速度測定は、屋久島において各標高別に常緑樹種と落葉樹種について最大光合成速度の季節的変化を測定した。現在膨大なデータを解析中であるが、基本的には葉寿命が長ければ、最大光合成速度が低く、葉寿命が短ければ最大光合成速度が高いという、モデルから導かれる予測を満たす結果が得られている。さらに同じ落葉性樹種であっても、葉寿命の異なるオオバヤシャブシとブナを用いて、葉寿命の長期追跡と、光合成速度の継続観測を行った。オオバヤシャブシでは葉寿命は短いが、常に新しい葉を枝先端に付け、良好な光条件を有効に利用しているのに対し、ブナでは全ての葉を一斉に開葉させ、長期的に持続していることが明らかとなった。またボルネオ島キナバル山地林において数種常緑性樹種の光合成速度を測定した。常緑性樹種であっても、葉寿命には長短があり、長いものでは最大光合成速度が低いという傾向や、光合成速度の時間的低下率が低いという傾向が認められた。これらの傾向は全て、新しい常緑性落葉性モデルの前提と予測を補強するものである。
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