研究概要 |
本研究は,最近開発された1kH油圧サーボ式軸荷重疲労試験機を導入し,また従来の回転曲げ疲労試験機も併用して,高強度鋼SUJ2,SCM435について変動荷重下の長寿命疲労試験を行い,長寿命域のS-N曲線を用いた累積損傷評価法について検討した.さらに長寿命域の疲労損傷・破壊機構に立ち入って累積疲労損傷評価法を確立し,実機においても諸条件を勘案して合理的に適用することが可能な評価法の考案を試みた.さらに表面硬化材など表面下の介在物からき裂発生する場合には,破面観察を通じてその機構を明らかにするべく努め,破面観察で得られた結果との対応から寿命評価法を明らかにした. まず高強度鋼SUJ2について,回転曲げ疲労試験機による一定荷重試験を行い,超長寿命域を含むS-N曲線を求めた.その結果,内部起点型破壊と表面起点型破壊の2種類が確認され,破壊機構の違いによって2重のS-N曲線が得られることが判明した.さらに2段2重変動荷重試験および2段繰返し変動荷重試験を行い,超長寿命域における損傷値の評価について検討した.内部起点型破壊と表面起点型破壊それぞれのS-N曲線を独立に用いた累積損傷評価の適用を試みたが,特に内部起点型破壊を生じる場合には,いずれのS-N曲線を用いた場合でも適当な損傷値を得ることは困難であった.内部起点型破壊の場合,介在物からき裂進展が材料内部で生じている.そのような内部き裂進展の寿命を考慮することで,比較的良好な損傷値が得られることが判明した. 高強度鋼SCM435については,回転曲げおよび引張圧縮疲労試験機を用いて一定荷重試験を行い,超長寿命域を含むS-N曲線を求め,破面観察等により超長寿命域における疲労破壊機構の検討した.その結果,本材ではSUJ2で見られた内部起点型破壊が生じないことが判明した.また,引張圧縮試験では2段繰返し変動荷重試験を行い,超長寿命域における累積損傷評価法の有効性を示した.
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