研究概要 |
主鎖直鎖上にπ電子共役系の発達した導電性高分子において、立体規則性が制御されたポリアルキルチオフェン(HT-PATn)は、高いπ電子共役長を示すことで知られている。これを試料とし、AI/HT-PATn/Auダイオードにおけるナノ界面での光誘起キャリアの生成機構、輸送機構および界面形成メカニズム等について調査検討を行った。具体的な手法としては、TOF法による移動度評価、光起電力測定による光電流及びそれらの温度依存性について調査した。また、HT-PATnと電極金属Al, Auとの接合で形成されるナノ界面について、ナノマニピュレータを用いて電位分布を直接マッピングし、電子状態及び電気伝導機構について調査検討を行った。その結果、1.Al/HT-PATn/Au構造セルの電流-電圧特性から、整流効果はAl/HT-PATn界面でのショットキー接合形成、及びAu/HT-PATn界面でのオーミック接合形成によることを明らかとし、ショットキー厚みを数十nmであることを見積もった。 2.HT-PATnはアルキル側鎖長の減少に伴いその移動度は上昇し、n=4のブチル基で約0.01cm2/vsと高い移動度を示し、電子デバイスとしての高い応用性を示した。 3.Al/HT-PAT6/Auセルの電位分布測定により、Al/HT-PAT6界面で印加電圧の95%がかかることを示した。更に、Auとのオーミック界面においても数百kΩの高い接触抵抗を見いだし、有機素子デザインに際し、極めて重要な知見を得た。
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