研究概要 |
本研究では当初の研究計画通り,強風地域である和歌山県潮岬の京都大学防災研究所潮岬風力実験所敷地内に,大縮尺の斜張橋ケーブルモデルを建設しケーブルの空力振動の観測を試みた.さらに,風洞実験により傾斜ケーブルにおける高風速渦励振の発生機構を考察した. まず,大縮尺斜張橋モデルの設計を行い,高さ約22mの鉄塔を建設した後,アルミパイプをポリエチレン管で被い,実際のケーブル表面を模擬した長さ30mのケーブル模型を塔先端に取り付け,反対側を地面に固定した.振動計測は加速時計,ロードセルを用いて,常時計測を行った.また風速については,風力実験所内の風速計データを参照している.その結果,カルマン渦励振による振動が常時観測されたほか,強風かつ降雨時には高風速渦励振と思われる振動が検出された.この振動は,実際の斜張橋ケーブルにおいて,レインバイブレーションが発生した無次元風速域とよく合致することが確認された.またJohns Hopkins大学と相互訪問行い,共同研究を行った.その結果,米国の斜張橋におけるケーブル振動観測データと,本実験における観測データとの比較検討も行った. 更に,レインバイブレーションの発生メカニズムを解明するために,剛体傾斜ケーブル模型を用いた風洞実験も行った.静止時の後流域における変動風速測定実験,ロードセルによる非定常空気力測定実験,バネ支持状態における傾斜円柱の自由振動実験等を行った.その結果,降雨時にケーブル上面に形成される水路によって,高風速渦励振が極めて発生しやすくなることが判明した.さらに,乱流中においては,その水路の効果が極めて顕著に現れ,実際の斜張橋におけるレインバイブレーションの発生条件によく一致していると思われる.このことより,降雨によってケーブル上面に形成される水路及び自然風の乱れが,高風速渦励振の発生機構に極めて重要な意味を持つことが判明した.
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