研究概要 |
本研究では,カルマン渦の放出特性や水路,乱流の効果等に着目して,斜張橋ケーブルの高風速渦励振・レインバイブレーションの発生メカニズムの解明を目指すと共に,発散型振動であるギャロッピングについて,風洞実験ならびに大型ケーブル模型を用いた屋外観測実験によって検討を加えた. 風洞実験から以下の成果を得た. 傾斜ケーブルでは,カルマン渦放出周波数がケーブルスパン方向に変化することにより高風速渦励振が励起されている可能性があることが示唆された.また,実際の斜張橋ケーブルで降雨時に多く高風速渦励振(レインバイブレーション)が観測されているのは,ケーブル表面の水路形成位置がケーブルスパン方向に一様でないことにより,水路形成のないケーブル(晴天時)に比べてカルマン渦放出周波数のケーブルスパン方向変化が増幅しているためであると考えられる.さらに,カルマン渦がギャロッピングの発現を抑制している可能性があることが判明した. 次ぎに,大型ケーブル模型の屋外観測で得られた成果を以下に述べる. ●微風時においてカルマン渦励振と考えられる振動現象が観測された.さらにカルマン渦励振によると考えられるビート現象も確認され,うねりの周期から換算した無次元風速(V/fD=20.4)が名港西大橋で観測された高風速渦励振によるビート現象の無次元風速と近い値であることが判明した. ●台風11号の強風により大振幅面外振動(最大倍振幅1.36m)が確認された.ウェーブレット解析,確率密度関数及び時刻歴応答解析による検討の結果,バッフェティングとして考えた振動応答よりも大きな振動振幅であった可能性が示唆された.しかし,高風速渦励振またはギャロッピングのいずれの振動現象であったのかについての特定は,今後の課題である.
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