本研究では室内材料から発生する有機物質と環境中の湿度の関係、すなわち表面における有機物質と水分の相互作用に関して考察することにより、湿度の要素を加味した発生機構について解明することを目的としている。 本年度は、実験的な検討を主に行った。まず、環境中の湿度を制御し、高湿度あるいは低湿度状態の際の発生量について測定を行った。この際に当年度計上したガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて、ガス成分の定性・定量分析を行うとともに、その発生量・発生速度について測定を行った。条件を絞り込むために、建材として解析のしやすい塩ビシートを用いた。結果として、湿度が高い場合は、発生量が多くなる傾向にあることが明かとなった。 次に、建材中に含まれる水分量について、水分計を用いて測定を行った。結果としては予想通り湿度の高い場合は水分量が多く、低い場合は少ない線形な関係が得られた。また、この際に材料中に含まれる水分の他に、材料表面に吸着している水分量が比較的大きいことが明かとなった。 両者の実験から、環境中の湿度の変化によって、材料内部の水分量は緩やかに、表面は環境中に素早く反応して変化するものと考えられ、その傾向が発生ガスの経時変化にも現れる結果となった。 来年度以降は、環境中湿度の変化による表面の水分量のモニタリングを行うことにより、有機物質の発生が表面上に吸着している水分に関係するのか、あるいは内部の水分が関係しているのかを解明していく予定である。
|