明治以降の近代化、さらに戦後の高度経済成長期を経て、多くの都市河川が廃止・転用されてきたが、近年では、都市環境の改善を図るため、これらの都市河川の再生が求められている。 そこで本研究では、まず、明治の近代化が始まった時期を基点とし、凡そ過去100年間を調査期間として、この間における東京23区内の廃止された河川の廃止実態を概ね過去100年間の地図情報をベースにして調査した。当時の陸軍測量部隊による詳細地形図と大日本陸地測量部による1/1万地形図をベースマップとして、その後刊行された地形図をオーバーレイすることで、都市河川消滅の事実を確認した。さらに下水道の整備図と同定することで、水路に蓋掛けし下水道化された都市河川の実態が明らかになった。一方、その上部空間の利用状況について調査した結果、その殆どが道路として、残りが緑道として利用されていることが明らかとなった。 次に、東京区部に分布する蓋掛河川の中から、調査可能な5つの河川を選定し、蓋掛部分の内部に入り、内部空間の環境実測、撮影、さらに採水および流速測定を行った。また上部の状況についても踏査し記録した。この結果、河川の流量は十分あるが、蓋を開けての再生を目指す場合、合流式下水道である以上、水質の確保が困難であることが確認された。この解決策として、蓋掛河川の分流化を提案し、雨水だけでは不足する水量を賄うために、既存の清流復活事業でみられるような下水道高度処理水を放流する設定で、流量を試算した。既に処理水の放流実績がある落合処理場から5つの河川に処理水を引くとすると、落合処理場の全処理水量の約51%で賄えるという結果を得た。これにより、蓋掛河川の悪臭、不潔さ等が解消され、再び都心の親水空間として再生が可能になると同時に、大雨時のオーバーフローによる水質汚濁の回避にもつながることが期待できる。
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