急激な都市化に伴い、東京区部の中小河川は、道路や下永道など近代化に欠かせなかった都市のインフラストラクチャーにその空間を占拠されてきた。その多くは水源が絶たれ埋立られたが、蓋を掛けられ一部で水路として残っている河川がある。昨年度の調査ではこの蓋掛河川に焦点を絞り、その実態を調査するとともに、下水処理水を活用した蓋掛河川の再生手法を提案し、中野区の桃園川においてケーススタディを行った。このケースでは、下水処理場から河川まで原則として自然流下で導水したが、下水処理場が河川の河流にある場合については、揚水のためのポンプ動力が必要となり、省エネルギー性および経済性の面から適用が難しいと考えられる。そこで本年度は、雨水を活用した再生手法を提案し、同じく桃園川にてケーススタディを行った。また、雨水と同様に自然の水循環から得られる湧水に着目し、23区内に現存する湧水について調査を行った。 雨水を活用した蓋掛河川の再生手法を提案したねらいは、水源の確保や用地取得に困難な問題がなく、省力型でかつ地域内依存を実現する手法の確立である。対象河川の選定にあたっては、上部構造の一部改変により水路回復が可能な桃園川を選択した。また降水の自然流下を利用するために、桃園川流域を分水嶺と道路側溝の流水勾配により5区域に分割し、区域ごとの降水量を算定した。降水量が不足する冬期に備え、余剰月の降水を過分貯留するために各区域に複数の貯留池を設定した。これにより河川の必要流水量は確保され、蓋掛河川の再生が十分可能であることがわかった。また、都の調査によれば23区内の湧水は290箇所確認されており、増加傾向にあることがわかった。このうち蓋掛河川近辺の湧水地点における湧水量を調査した。本年度は湧水の渇水期における調査であったため、次年度の調査により、湧水の利用可能性について検討を行う予定である。
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