本研究では、東京区部における廃止河川の実態を踏まえた上で、再生のための条件及び復元手法の検討を行った。 1.都区部における中小河川は、大正期の河川距離の約8割が廃止されていた。廃止河川の上部空間は4分の3が道路として、下部空間は約6割が埋め立てや蓋掛けにより下水道として転用されていた。また、全体の約3割を蓋掛河川が占めていた。 2.蓋掛河川の上部空間は、その67%は道路・宅地として、33%が緑道・公園として利用されていた。緑道・公園のうち水路再生済みが6%、未再生が27%であった。 3.蓋掛河川の下部空間を断面形態によって4つに分類した結果、雨水下水渠または合流下水渠で土被りの有るものが90%以上を占めていた。水質を調査したところ、BODが基準値を大きく上回った。水量を調査したところ、河川によって流量がばらついていた。 4.蓋掛河川再生のための条件について考察した。行政の意識としては、河川再生には積極的であるが、下水道の分流化までは考えていないことが示された。蓋掛河川の再生に必要な条件としては、緑道・公園の十分な幅員確保、水量確保、貯水施設の確保などがあがった。また、蓋掛河川の再生の妨げとなっているのは、上部空間が道路・宅地であること、水量の確保ができないことである。 5.桃園川を例に取り雨水を水源とした蓋掛河川の復元手法について検討した。地形的に雨水の自然流下が利用できる上、揚水動力用に施設屋上に太陽光発電を設置することで、ほとんど自然エネルギーの活用のみで水路が復元可能であることが示された。 6.廃止河川流域に存在する湧水を水源とした復元手法について検討した。湧水地点の湧水量調査を行った結果、蓋掛河川再生を小水路・親水公園として再生できる水量が存在することがわかった。羅漢寺川を例に取り上げ検討を行った結果、湧水を利用して部分的に河川を再生させることは十分可能であることが示された。
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