研究課題
基盤研究(A)
本研究は脆性相を含む多相金属材料における延性発現機構を解明することを目的とし、脆性相の種類や分散形態を変えた多相金属材料を用いた機械試験とナノスケールの組織観察を行うことにより、室温延性と破壊の巨視的情報、さらには母相や界面における転位組織などの微視的情報を実験的に収集するとともに、これら実験結果を弾性論的解析手法により説明することを試みるものである。本年度も引き続き数種の合金系における脆性な母相と延性な析出相の組み合わせ、あるいは延性な母相と脆性な析出相の組み合わせにおいて、それぞれの組織形態、結晶構造、母相/析出相間の方位関係、などとと常温から高温に至るまでの強さ・延性・靭性との関係を実験的に、系統的に調べた。Fe-Mn-Al-C系においてはfccオーステナイト固溶体を母相とし、同じ蝕構造を基調とするE2_1型規則構造を有する(Fe, Mn)_3AlC金属間化合物を析出相とする合金における不連続析出の発現条件の検討、連続析出する場合との機械的特性の相違について検討した。また、Ti-Al-C系においてはhcp母相中への同じE21型規則構造を有するTi_3AIC金属間化合物が析出する場合の組織形成過程と組織形態を調べ、これらと機械的性質の関連について検討した。このほか、Nb-Si-Ti合金では高温のみで安定なNb3Sけ目の共析分解で形成する延性なNb固溶体と脆性なNb_5Si_3相からなるラメラー組織においては、室温ではラメラー間隔が小さいほど強度が高く延性が低いのに対して、高温では強度と延性ともにラメラー間隔が大きいほど優れるという結果を基に、延性相ラメラーの厚さが破壊靭性値に及ぼす影響を考察した。これらの知見を活かして浮遊帯炉を用いた一方向凝固によってラメラーの配向を制御して高い室温靭性が得られる条件を見いだした。
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