高機能酸化物発光材料の作製と磁気共鳴による局所構造の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12305045
• 研究機関: 静岡大学
• 研究代表者: 中村 高遠 静岡大学, 工学部, 教授 (10022287)
• 研究分担者: 太田 雅壽 新潟大学, 工学部, 助教授 (60092673) ; 高橋 直行 静岡大学, 工学部, 助教授 (50242243)
• キーワード: 磁気共鳴 / 高周波EPR / アルカリドルイ金属アルミネート / 酸化亜鉛 / 長残光 / 紫外発光 / X線輝尽発光

研究概要

(1)長残光SrAl_2O_4:Eu, Dy蛍光体については、X-band EPR装置を用いて結晶内に存在する常磁性トラップ(電子およびホール)について究明した。Sr/Al比を化学量論より、わずかに増減させた場合のXRDおよびEPRスペクトル変化を観察し、もともと存在するトラップ、およびそれらに紫外線を照射した場合に生ずるトラップを明らかにした。つまり、Sr空孔にトラップされたホールが存在すること、光照射によって[O_3-Al-O_3]^oが生成すること、低温で光照射後にサンプルを室温に曝すとそれらのトラップの信号が減衰することを見出した。そして、Dyの有無で2,3の信号の減衰挙動が異なることを基にして発光機構を提案した。得られた結果はElectrochemical Society主催の国際会議で発表した。
(2)X-線輝尽蛍光体であるstillwellite型SrBPO_5結晶に高濃度のEu(II)をドープした場合を高磁場EPRによって究明した。90GHzEPRスペクトルは、g=2付近にもっとも強い信号をもつ、左右対称に近いパターンであった。そしてPL測定の結果をもとに、Eu(II)が2つのサイトを占めると仮定してシミュレーションを行った。その結果、ゼロ磁場分裂パラメータDが大きく、E/Dは比較的小さい値をもつサイトであることが判明した。また、両者のスペクトル強度比は結晶学的に予想された比と一致した。これらの結果は、固体のルミネッセンスと光分光学の国際会議で発表した。
(3)紫外領域に発光が期待されるSrln_2O_4:Gdに高磁場EPR法を応用した。その結果、Gdの占めるサイトは90GHzのマイクロ波エネルギーでもhv/|D|<<1であることを示唆する強い信号が1,2および4Tに観察され、SrAl_2O_4:Eu, DyおよびSrBPO_5:Euよりもサイト対称性が低いことが分かった。
(4)ZnO薄膜については、薄膜作成後サファイア基板を研磨除去したstand-alone薄膜のESRを検討した。その結果、紫外域で発光するが500nm付近にPLを示さない良質のZnO薄膜は非常に弱いEPRがg=1.97付近に現れた。しかし、その強度は市販の単結晶よりも弱く、大気圧ハライドCVDで作製した薄膜の膜質が非常によいことを証明した。

研究成果

• [文献書誌] 中村 高遠: "常磁性共鳴における新しい展開"杉山産業化学研究所年報. 83-94 (2001)
• [文献書誌] T.Takeyama, T.Nakamura, N.Takahashi, V.Beltran-Lopez, C.C.Rowlands: "Full Monte Carlo and Fourier Transformed Monte Carlo EPR Spectral Simulations of ^8S State Ions"Proc.Asia-Pacific EPR/ESR Symposium. 63-68 (2002)
• [文献書誌] K.Kaiya, K.Omichi, N.Takahashi, T.Nakamura, S.Okamoto, H.Yamamoto: "Epitaxial Growth of ZnO Thin Films Exhibiting Room-Temperture Ultraviolet Emission"Thin Solid Films. Vol.409. 116-119 (2002)
• [文献書誌] M.Ohta, T.Nakamura, M.Takami: "Thermoluminescent Mechanism of Tridymite SiO_2 Phosphors"Proc.Asia-Pacific EPR/ESR Symposium. 270-275 (2002)
• [文献書誌] T.Nakamura, T.Takeyama, N.Takahashi, R.jagannathan, A.Karthikeyani, G.M.Smith, P.C.Riedi: "High Frequency EPR Investigation of X-ray Storage SrBPO5:Eu"J.Lumin. (in press). (2003)