本年度は本研究の初年度であり、計画に沿って数値計算及び計測実験研究を進め、当初の期待以上の成果を得た。具体的成果を列記する。 ・数値解析:SOLA-VOF法に過冷液的の凝固プロセスを組み込んだプログラムを開発した。本プログラムにより融体物性データが入手可能、かつ溶射計測実験可能な粒子としてAl_2O_3を例にとり系統的な数値解析を行った。特に、本プログラムの健全性を検討するため、過冷度及び初期凝固速度に関する系統的計算を行い、論理的に妥当な結果が得られるかいなかについて検討した。結果として、プログラムの健全比が確認されたため、過冷度と粒子偏平度間の関連を導出することが可能となった。また、実験との対応を検討するため、界面熱抵抗に関して一連の計算をおこなった。このようなアプローチは世界で始めての試みであり、論文としてまとめ発表した。 ・実験:現有装置を用いてジルコニア粒子の速度、粒経、特に基板衝突時の表面温度変化を測定した。測定原理は、基板直上と基板表面を視野に入れた2つの光りファイバーにより粒子の放射光を取り込み、2波長に分光し電子増倍管により電気信号に変換、デジタルオシロスコープにより高速サンプリングを行うものである。ここでジルコニア粒子を用いたのは融点が3000Kと高く、その凝固現象を2500K以上しか計測しえない現システムでも可能なためであるが、ジルコニアの粘性や表面張力など高温物性値が不明であり、数値解析との対応は困難であるため、本年度の実験は、新システム設計のための基礎データ収集、及びサンプリング手法の改良に主眼を置いた。その結果、2500K以下では電子増倍管の感度が著しく低下するため過冷状態を計測できないこと、サンプリング速度を少々犠牲にしても半導体センサーを使用すべきであることなど、重要な知見が得られた。
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