研究概要 |
昨年度は、リボザイムにヘリケース結合活性を有するCostitutive Transport Element(CTE配列)を導入することにより、mRNAの2次構造をほどきながら切断する、スライディングリボザイムの開発を行った。このリボザィムを用いることにより、特定の遺伝子のノックダウンがこれまでに比べて極めて容易に、しかもより高いレベルで可能になった。今年度はまず、ヘリケース結合活性を有する他の配列としてmRNAの3'側に付加されるpoly A配列が同様の効果を有するかどうかの検討を行った。その結果、in vitro, in vivo共に、poly A配列を付加することにより、RNAの2次構造の影響されずに効率よく、RNAを切断できることが明らかになった。また、poly A配列がリクルートしているヘリケースはeIF4AIであることを同定した。次にこのpoly A付加型リボザイムを用いて、基質認識配列をランダマイズしたリボザイムライブラリーを構築し、TNF-αによるアポトシスに関与する因子の探索を試みた。MCF-7細胞にレトロウイルスベクターを用いて構築したリボザイムライブラリーを感染させ、TNFαでアポトシスを誘導し、生き残った細胞からリボザイムをPCRによって回収し、その配列をシークエンスしたところ、アポトシスに関与していることが知られているTRADD, caspases 2 and 8, RIP, RAIDD, TRAF 2, Ets1, Bakなどの配列が見出された。また、これらのリボザイムを細胞に導入すると有意にTNF-αによって誘導されるアポトシスを阻害した。この結果から、poly A付加型リボザイムライブラリーを用いて、機能を指標としたスクリーニング(ジーンディスカバリー)が実際に可能であることを示した。また、このスクリーニングで新たに30遺伝子がアポトシスの抑制に働くことが明らかになった。同様のスクリーニング系を用いて、Fasによって誘導されるアポトシスに対してもスクリーニングを行ったところ52個のアポトシスの誘導を抑制する因子が同定された。来年度はこのリボザイムを用いたジーンディスカバリーを他のスクリーニング系で行いたいと考えている。
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