研究課題/領域番号 |
12305058
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大嶌 幸一郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (00111922)
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研究分担者 |
忍久保 洋 京都大学, 工学研究科, 助手 (50281100)
松原 誠二郎 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90190496)
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キーワード | ラジカル反応 / 重水素化反応 / 次亜リン酸 / 理論計算 / 環化 / 水 / ab initio法 |
研究概要 |
1.亜リン酸を用いたラジカル反応と簡便なラジカル的重水素化反応の開発・・・o-ヨードフェノールのクロチルエーテルのエタノール溶液に次亜リン酸水溶液と炭酸水素ナトリウムならびにラジカル開始剤としてAIBNを加える。これを5時間加熱還流するとヨウ素の還元が高収率で進行することを見いだした。この反応を用いると、毒性の高い有機スズ系の還元剤を用いることなく、有機ハロゲン化合物の還元を効率よく行うことができることを明らかにした。一方ホスフィン酸ナトリウム一水和物を重水に溶かし、ここへ重塩酸を加え溶液を酸性にし3時間撹拌する。炭酸カリウムを加えて塩基性とした後、基質としてヨード安息香酸を加える。さらに開始剤としてラジカル開始剤を加え加熱すると、重水素化体が得られることが明らかとなった。高価な金属重水素化物を用いることなく安価な重水を用いて含重水素有機化合物を合成する方法を開発することができた。 2.水中でのヨード酢酸アリルのラジカル環化反応に対する理論計算・・・有機溶媒中では困難なヨード酢酸アリルのラジカル環化が水を溶媒とすると効率よく進行する。この溶媒効果について詳しく考察するためab initio法による理論計算を行った。計算はGaussian98プログラムを用い、基底関数にはB3LYP/6-31G^*を用いた。溶媒効果についてはSCRF/CPCM法を適用した。真空中での(アリロキシカルボニル)メチルラジカルの環化について計算したところ5-exo閉環は不利となった。次に、水中での反応経路について考察したところ環化の活性化エネルギーが低くなることが明かとなった。また他の溶媒とくらべて水は強固な水素結合に由来する異常に大きな凝集エネルギー密度を有し、水の中に溶け込んだ分子の体積を小さくしようとする効果が極めて大きい。そこで(アリロキシカルボニル)メチルラジカルの環化における、水中での分子体積の計算を行った。その結果、閉環の際には大きな体積減少が見られた。よって水の静電的な効果だけでなく水溶媒が分子体積を小さくしようとする効果も環化過程を加速していることが明らかとなった。
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