研究概要 |
プラスミド(pTRI-β-ACTIN-MOUSE, pQBI T7 sgGFP Vector)とラクトース誘導体とのコンジュゲート(糖導入率約10%)を合成した。このコンジュゲートはラクトース結合性レクチン(RCA_<120>)と複合体を形成することが、ゲルシフトアッセイおよび表面プラズモン共鳴(SPR)測定により確認され、その結合定数はラクトースあたりで2.4〜7.5x10^5M^<-1>であった。 β-actinプラスミド-ラクトースコンジュゲートのin vitro転写、およびsgGFPプラスミド-ラクトースコンジュゲートのin vitro遺伝子発現に対するRCA_<120>の添加効果を調べた。転写レベルを転写されるmRNAの電気泳動によるバンドの濃さとして観察した。RCA_<120>はnative plasmidの転写および発現に対してはほとんど影響を及ぼさないのに対し、コンジュゲートの転写・発現は制御することが分かった。 次にこのレクチンによる転写・発現抑制系にシグナルとしてラクトースを加えることにより、転写・発現が誘導されるかどうかを検討した。ラクトースもしくはラクトース担持リポソーム、ラクトース担持ポリマー(PVLA, PNLac)を1mM-Lac加えることにより転写・発現がnative Plasmidの値近くまで誘導されることが分かった。 抑制・誘導の過程におけるコンジュゲートとレクチンとの複合体構造をAFMおよびTEMにより詳しく観察したその結果、抑制条件においてコンジュゲートとレクチンとは複数分子同士の大きな複合体を形成していることが分かった。さらに、非抑制条件下では複合体構造が緩んでいる様子も観察された。このことからコンジュゲートとレクチンとが複雑な複合体を形成することで遺伝子発現は抑制され、ラクトースなどの添加によりその結合が緩和され、遺伝子発現が誘導されるということが考えられる。
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