(1)ライムギ1R染色体に座乗するさび病抵抗性遺伝子Lr26とうどんこ病抵抗性遺伝子Pm8を有し、種子貯蔵タンパク質セカリンを失っている2系統を日本の標準的なパンコムギ品種農林61号とコムギ研究の標準的品種Chinese Springに戻し交配した。 (2)Lr26とPm8と近傍にさらに切断を誘発するため、1R(1B)+3C'系統に農林61号を交配した子孫988個体を播種し、929個体について1R染色体の構造異常をGISH法により選抜した。その結果19.3%の個体が何らかの1R染色体構造異常を有していた。明らかに1Rの付随体に切断のある個体について、セカリン遺伝子座と末端DNAマーカーiag95のPCR分析により3個体がセカリンを有しiag95を失っていること、すなわち切断点がセカリンと末端の間であることを明らかにした。 (3)Pm8の抑制遺伝子の遺伝解析のための系統育成のため、必要な系統を栽培中である。 (4)オオムギ2H染色体の構造異常系統を新たに14系統得、先年度得た7系統と合わせて21系統とした。一部の系統の検定の結果から、ホーダチン生産に関与する遺伝子は2Hの短腕に存在することを明らかにした。しかし、その生産量は、オオムギにおける生産量の1/10程度であったことから、別のオオムギ染色体にも必要な遺伝子が存在する可能性があったので、2H添加系統とそれ以外のオオムギ染色体(1Hを除く)添加系統を交配して、それらの子孫についてホーダチン検定を行った。その結果は、3H〜7H染色体の追加はホーダチン生産量の増加をもたらさなかった。現在、入手できなかった1H染色体添加系統との交配準備をしている。 (5)国内外でオオムギESTデータが大量に利用できるようなり、本研究にも利用する目的で、岡山大学で開発されたESTマーカーを各オオムギ染色体に割り付けるPCR分析を開始した。
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