研究概要 |
本年度の実績は以下の通りである。 (1)これまでに得られた1R付随体の欠失・転座を有する植物を用いた1R付随体の物理的染色体地図の作製を目指して、各種分子マーカーをデーターベースから選抜した。その内、iag95(Mago, et al., Theor.Appl.Genet(2002)104)などDNAマーカーが1R付随体の欠失・転座系統における欠失ライ染色体断片の有無を有効に判定することを明らかにした。また、この研究の過程で、ライムギ特有のDNA配列を増幅するPCRプライマーを設計し、PCRによりパンコムギに導入された微小なライムギ染色体断片をも検出することができることを明らかにした。 2)パンコムギにうどんこ病抵抗性を付与するライムギ1R染色体に座乗するPm8遺伝子に対するパンコムギ側の抑制遺伝子SuPm8の解明を目指して、SuPm8を持たず1R染色体を一対持つ系統とSuPm8持つ系統(Chinese Spring)間のF_1からF_2集団を育成した。さらに、Pm8の座乗する1R染色体付随体断片が転座したホモ接合でSuPm8がヘテロ接合の系統を得、SuPm8が分離することが期待される自家受精集団を得た。 (3)これまでに得られた異なる2H染色体の欠失・転座をヘテロ接合状態で有するパンコムギ28系統を用いて、ホーダチン生成の検定を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって行った。ホーダチン生合成に関与する遺伝子は2H染色体の短腕の末端近傍に座乗することが明らかになった。また、2H染色体長腕にホーダチン生成を増大させる遺伝因子が存在することも明らかになった。 (4)岡山大学で開発されたオオムギ特異的ESTプライマーを利用して約700ESTをオオムギ染色体に割り振りをして、ESTが各染色体にほぼ均等に分布していることを明かにした。
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