環境中に微量存在する農薬等の化学物質の土壌生態系に及ぼす影響評価法の開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12306004
• 研究機関: 島根大学
• 研究代表者: 山本 広基 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (30112121)
• 研究分担者: 井藤 和人 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (20273922) ; 妹尾 啓史 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (40206652) ; 片山 新太 名古屋大学, 難処理人工物研究センター, 教授 (60185808) ; 西山 雅也 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50263801) ; 豊田 剛己 東京農工大学, 大学院・生物システム応用科学研究科, 助教授 (30262893) ; 巣山 弘介 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (70284023)
• キーワード: 土壌生態系 / 微生物バイオマス / 微少熱量計 / キノンプロファイル / PCR-DGGE / バイオログ / 農薬の生態影響評価 / リングテスト

研究概要

先年代表者らが提案した土壌生態系影響評価試験法のうちの「硝化活性」について、提案の方法の問題点を抽出するため、各分担者の研究室においてリングテストを案施したところ、大きな問題はなかったが、土壌pHの調整、培養温度管理等についての注意事項を付記する必要があることが明らかとなった。
畑水分条件およぴ湛水条件の土壌に農薬を添加し、微生物バイオマス、基質誘導呼吸、硝化活性、芳香族化合物資化性、キノンプロファイルを測定し、微生物生態系を量、構造および活性の点から同時に解析することによって、土壌生態系への農薬の影響を明らかにするとともに、各試験法の影響評価法としての可能性を検討した。
バイオログプレートを用いた土壌微生物フロラの解析では、農薬の処理や土壌の湛水による土壌微生物フロラの変化を検出でき、フロラの変化の大きさから農薬による影響の大きさを評価する方法を提案した。
細菌集団の構成解析では、農薬処理土壌からDNAを抽出し、16Sリボソーム遺伝子領域をPCRで増幅した後、アンモニア酸化細菌に特異的な領域を増幅し、DGGE解析を試みた。増幅は確認されたがDGGE解析には至らなかった。また、水田微生物全菌数は表層土壌、田面水ともに農薬添加で顕著な影響を受けなかったが、PCR-DGGEからみた田面水の群集構造は変化することが明らかになった。
土壌微生物活性に及ぼす農薬の影響評価法としての微少熱量法の可能性について検討し、本法では土壌中の細菌と糸状菌の両者の有機物代謝活性をトータルとして捉え得るが、ケミカルストレスの検出感度は低いことを明らかにした。また、水田土壌系においては微生物による熱生成を実用的な精度で計測することはできず、基質濃度等の諸条件についてさらに検討を要すると判断された。

研究成果

• [文献書誌] Itoh, K., Goto, D., Sueyasu, K., Suyama, K., Yamamoto, H.: "Effect of Chloropicrin Fumigation on Microbial Communities Evaluated by Community-Level Physiological Profile and the Resistance against Fusarium Wilt"Soil Science and Plant Nutrition. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] 豊田剛己: "農薬および微生物農薬の生態系へのインパクト"東京農工大学平成12年度教育改革・改善プロジェクト成果報告書. 47-52 (2001)
• [文献書誌] Katayama, A., Funasaka, K., Fujie, K.: "Changes in respiratory qinone profile of a soil treated with pesticides"Biology and Fertlity of Soils. 33. 454-459 (2001)
• [文献書誌] Suyama, K., Okamoto, Y., Itoh, K., Yamamoto, H., 他9名: "Natural fluctuation of microbial biomass and population in rice paddy soils as a basis for assessing the side-effect of pesticides on soil ecosystem"J. Pesticide Science. 26. 127-135 (2001)