研究概要 |
1.コリシンE5の基質特異性と反応機構:コリシンE5は大腸菌のTyr, His, Asn, Aspに対するtRNAを天然基質として切断するが、合成RNAを用いて検討した結果、(C/U)pGpUpNpをループ上に含むRNAを基質として好み、NはA>C>G>Uの順で活性が高く、天然の基質tRNAの感受性の序列をほぼ説明すること、また基質最小単位はGpUpでありその切断部位はGp/Up間であることがわかった。触媒反応機構は、前年度のモデルとは異なり、他原子団の影響で塩基性が増大したArgが、基質グアノシル基の2'OHに一般塩基として働き、生じた2'Oが、二つのLys残基などで安定化されたリン酸のリン原子を求核攻撃する、という新規のモデルに至った。 2.コリシンE5ホモログの活性:緑膿菌POl株のゲノムが決定され、その中でコリシンE5のC末端活性ドメイン(E5-CRD)とアミノ酸配列で50%相同な遺伝子が見つかり、遺伝子構造をもとにピオシンS4と命名された。CRD部分を欠いたコリシンとS4-CRDを遺伝子融合させると、弱いながらコリシンとしての殺菌活性を示した。また精製したS4-CRDは、E5-CRDと同様の特異性をもったtRNase活性を示した。E5との相同性は50%に過ぎないが、基質認識と触媒機構に必要だと想定している残基は殆ど保存されていた。 3.コリシンDのC末端領域の活性:コリシンE5とのキメラ体で高活性を示すコリシンDのC末端166アミノ酸断片を精製し、野生型コリシン(697アミノ酸)と同等のtRNase特異性を確認した。In vitroタンパク合成系で生成直後の蛋白質が内在tRNAを切る活性で判断すると、C末端91アミノ酸でtRNase活性が検出されるが、この断片を精製した標品はインヒビターであるImmDへの結合活性は保持しているにもかかわらずtRNase活性は失っていた。
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