研究概要 |
1.コリシンE5の構造と反応機構:コリシンE5はTyr, His, Asn, Aspに対するtRNAのアンチコドンを切断して大腸菌を殺す。E5の活性ドメインE5-CRDはtRNAや合成アンチコドンステム/ループに対してはアンチコドン-1ないし+3文字目にかけて(C/U)pGpUpNpを基質として好むが(NはA>C>G>Uの順で活性が高い)、オリゴヌクレオチドではGpUpが基質として必要十分である。触媒機構は、再度以前示したモデルとは異なり、水分子に由来するOHイオンが求核触媒であるという反応モデルに至った。またE5-CRDとdGpdU、及びE5-CRDのR33Q変異体とdGpdUpとの、複合体のX線結晶構造解析により、E5-CRDはtRNAに対してmRNAのコドンを分子擬態し、特異的インヒビター1mmE5タンパクはE5-CRDに対してtRNAのアンチコドンを分子擬態していることが明らかになった。 2.コリシンDの構造と反応機構:コリシンDはArgのtRNAのアンチコドンループを切断して大腸菌を殺す。E5が局所的RNA配列を認識するのと対照的に、コリシンDの活性ドメインD-CRDはアンチコドンの32位,33位,36位めほかおそらくアンチコドンステムの付け根をも認識しtRNA分子を多角的に認識していることが明らかになった。酵素活性を持つ最小領域に近いC末端の94残基ドメインと特異的インヒビターImmD(87残基)との複合体のX線結晶構造を決定し、立体構造もE5とは全く異なることが確認できたが、E5の場合と似てImmDがHis611を含む活性中心に結合することが判明した。
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