研究課題
基盤研究(A)
我々は、tRNAを標的とするトキシン作用を2例発見した。コリシンは、大腸菌プラスミドが生産し他の大腸菌の細胞に侵入して細胞を殺す蛋白性毒素である。我々は、コリシンE5がtRNA^<Tyr>,tRNA^<His>,tRNA^<Asn>,tRNA^<Asp>のアンチコドンを切断して蛋白質合成を止め、菌を殺すこと、さらに別のコリシンDが、tRNA^<Arg>の4種のイソアクセプター分子のアンチコドンループ3'末端を切断して蛋白質合成を止めることを見出し、これらを"細胞毒性tRNase"と位置づけた。本研究では、"細胞毒性tRNase"のさらなる探索を行い、コリシンE5とDの分子構造と基質認識や酵素活性を究明するとともに、その応用可能性を探った。大腸菌0157株コレクションからtRNase型の新規コリシンを見つけることは出来なかったが、0157株の約1/4が何らかのコリシンを生産し、実にその3/4以上をコリシンDが占めていた。コリシンE5の活性ドメインE5-CRDは、コドンを分子擬態してtRNAアンチコドンを認識し、アルカリ開裂に似た新機構でRNAを切ること、またインヒビターImmE5はtRNAアンチコドンを分子擬態してE5-CRDに結合することを示した。E5-CRDは単鎖RNAのGU配列を切る「RNA制限酵素」である。これに対しコリシンDの活性ドメインD-CRDは局所構造のみの認識はしていない。D-CRDは基質との共結晶が得られなかったので基質との相互作用を示せなかったが、研究期間後に継続した各種変異実験により各残基の役割と分子機構が推定できた。また、tRNaseの酵母や動物細胞での発現に成功して、tRNAを切断して細胞増殖をとめること、各インヒビターによってその活性を中和できることを明らかにし、真核細胞機能研究のツールとなる可能性を示した。
すべて 2004 2003 2002 2001 2000 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (14件) 図書 (2件)
Biochemistry 43
ページ: 3214-3221
Biochem.Biophys.Res.Com. 322
ページ: 966-973
Biochem. Biophys. Res. Com. 966-973
Biochimie 84
ページ: 433-438
in Offensive and defensive proteins in biological interactions(eds, Uchiyama, T., et. al.)(Kyoritsu, Tokyo)
ページ: 333-340
Proc.Natl.Acad.Sci., USA 97
ページ: 8278-8283
Proc. Natl. Acad. Sci., USA 97