DNAマーカーによる魚類の遺伝的多様性および集団の遺伝的管理に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12306010
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 谷口 順彦 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20036742)
• 研究分担者: 高木 基裕 水産大学校, 小野臨湖実験実習施設, 助手 ; 池田 実 東北大学, 農学部, 教務職員 (70232204) ; 中嶋 正道 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20192221)
• キーワード: マイクロサテライトDNA / 集団遺伝学 / 遺伝的多様性 / 人工種苗 / 実験魚 / 絶滅危惧種

研究概要

人士種苗集団の有効な大きさの顕著な低下は遺伝的多様性の低下とともに継代による近交係数の上昇をまねくことになる。このような人工種苗の大量生産を行う限り、遺伝的変化、近交弱勢、無意識的選択などは避け難く、近交レベルの実態把握とそれらの防止に関する対策が求められる。
本研究は魚類の遺伝的多様性の実態を把握し、魚類集団の遺伝学的管理のための指針作りを目指すものである。ここでは、水産業または栽培漁業において重要な魚介類遺伝資源の利用と保全の課題を視野におきながら、魚類の遺伝的多様性の実態把握に努め、野生集団、人工採苗集団、絶滅危倶集団、実験魚集団など幾つかの典型集団を対象にして比較研究を進めた。また、DNAマーカーにより、魚類の養殖用および放流用人工種苗における集団の有効な大きざの実測を試みた。さらに、少数親魚による種苗生産において予測される遺伝的多様性の低下および近交係数の上昇について、実測を試みた。また、実験魚(グッピー)を用いて近交系を作出し、集団の有効な大きさと近交弱勢発現の機構を解明し、近親交配が魚類集団におよぼす遺伝的影響を、DNAマーカーを用いて推定する試みを行った。以上のような新しい知見とそのデーターを利用して、次世代における遺伝的変化に関するシミュレーションを実施することにより、遺伝的多様性の低下の防止および絶滅危倶種の修復に関するマニュアル作成を試みた。

研究成果

• [文献書誌] R.Perez-Enriquez, M.Takemura, K.Tabata, N.Taniguchi: "Genetic diversity of red sea bream Pagrus major in western Japan in relation to stock enhancement"FISHERIES SCIENCE. 67(1). 71-78 (2001)
• [文献書誌] E.Nugroho, D.J Ferrell, P.Smith, N.Taniguchi: "Genetic divergence of kingfish from Japan Australia and New Zealand inferred by microsatellite DNA and mitochondrial DNA control region markers"FISHERIES SCIENCE. 67(5). 843-853 (2001)
• [文献書誌] M.Ikeda, N.Taniguchi: "Genetic variation and divergence in populations of ayu Plecoglossus altivehs, including endangered subspecies, inferred from PCR-RFLP analysis of the mitochondrial DNA D-loop region"FISHERIES SCIENCE. 68(1). 18-26 (2002)
• [文献書誌] M.Nakajima, N.Taniguchi.: "Genetics of the guppy as a model for experiment in aquaculture"Genetica. 111. 279-289 (2001)
• [文献書誌] T.Shikano, T.Chiyokubo, N.Taniguchi: "Temporal changes in allele frequency, genetic variation and in breeding depression in small populations of the guppy, Poecilia reticulata"