研究課題/領域番号 |
12306015
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木曾 康郎 山口大学, 農学部, 教授 (10142374)
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研究分担者 |
森本 将弘 山口大学, 農学部, 助手 (30274187)
岩田 祐之 山口大学, 農学部, 教授 (40193750)
山本 芳実 山口大学, 農学部, 教授 (40115514)
奥田 優 山口大学, 農学部, 助教授 (10325243)
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キーワード | ビスフェノールA / IGF-1 / IGF-1過剰発現マウス / 胎盤 / 脱落膜 / エストロゲン受容体 / 子宮NK細胞 / アポトーシス |
研究概要 |
本年度は、内分泌撹乱物質であるビスフェノールAをこれまでに使用してきた遺伝子改変・破壊マウスおよび対照マウスに投与し、母子境界領域におけるビスフェノールAの毒性的的影響を検討した。ビスフェノールA投与により、着床数減少、胎盤構造の異常および子宮NK細胞の異常が認められたが、これらはすべてのマウスに共通した減少であった。しかし、ビスフェノールA投与でも着床した子宮内膜でIGF-1が多量に検出された。これはビスフェノールAが子宮内膜のエストロゲン受容体に結合し、子宮内膜を活性化し、結果としてIGF-1分泌を促したものと示唆されたが、IGF-1は栄養膜や胚の分化増殖に重要な役割を持っていることが知られているので、IGF-1の生殖学的役割を再検討した。リポフェクション法により、子宮内膜にIGF-1を過剰発現させたモデルマウスを作製し、IGF-1過剰発現マウスの妊娠子宮を採出し、生殖能力、胎盤、子宮NK細胞を比較検討した。驚いたことにIGF-1過剰発現マウスで段階的に流産が誘発された。すなわち着床はほぼ正常に起こったが、胎盤形成初期から完成期にかけて30-40%の胎子が死亡した。これらの死亡胎子を持つ胎盤を解析すると迷路部の発達も不十分であったが、海綿層がほとんど見られず、栄養膜巨細胞の発達が著しく悪かった。さらに脱落膜は有意に細胞成分に乏しく、子宮NK細胞の出現頻度は有意に高かった。アポトーシスを検討すると脱落膜細胞や子宮NK細胞はIGF-1過剰発現マウスではほとんど見られなかった。これは、IGF-1過剰発現マウスにおいて脱落膜の再構築が十分なされていないことを示唆する。以上から、内分泌撹乱物質による流産誘起は子宮内膜エストロゲン受容体に結合し、IGF-1分泌を促進し、IGF-1過剰発現は母子境界領域の細胞再構築に影響を与えたことによると示唆された。
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