研究分担者 |
西村 仁 筑波大学, 応用生物化学系, 講師 (80241347)
岡部 勝 大阪大学, 遺伝情報実験施設, 教授 (30089875)
岡村 直道 筑波大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30134224)
小倉 淳郎 理化学研究所, バイオリソースセンター・遺伝工学基盤技術室, 室長 (20194524)
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研究概要 |
精子成熟から精子の子宮・輸卵管移動,受精,および受精直後の卵活性化に焦点を絞って,これらの過程での精子機能とその制御機構を発生工学的手法によって解析し,以下の研究成果を得ることができた。 1.精子と卵の細胞融合で機能していると考えられているADAM1のサブタイプ(ADAM1aとADAM1b)のうちで,まずADAM1aに関してES細胞経由の遺伝子相同組換え法でノックアウトマウスを作製した。ADAM1a欠損オスマウスはすべて不妊であり,精子が子宮と輸卵管のジャンクションで滞留しているためであることが明らかとなった。このADAM1aは生殖細胞に多く存在しているが,精巣上体精子にはほとんどないため,子宮からの精子離脱に関与する分子群の機能制御を精子形成または成熟過程で行っている可能性がある。 2.精子の卵丘細胞間マトリックスの通過で機能していると考えられている精子ヒアルロニダーゼPH20のノックアウトマウスを作製した。予想に反して,PH20欠損オスマウスはすべて野生型と同等の生殖能力を保持していた。体外受精試験で調べてみると,PH20欠損マウス精子による卵丘細胞間マトリックス分散は顕著に遅れていたが,正常に受精できることも明確となった。 3.精子の卵透明帯通過で関与すると考えられているTESP5をコードするcDNA断片を動物培養細胞で発現させて,その機能解析を行った。組換え型TESP5はフォスファチジルイノシトール特異的フォスフォリパーゼC処理によって細胞膜から遊離することから,精子細胞膜マイクロドメインでGPIアンカータンパク質として存在していることが推測された。TESP5はアクロシンなどのプロテアーゼによって活性化されるので,アクロソーム反応前後で卵との相互作用を制御している可能性が見いだされた。現在,TESP5欠損マウスを作製中である。
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