研究概要 |
様々な細胞が様々な外部刺激を受けて、急激に細胞内骨格系を再編し、細胞の分裂に備えたり、細胞の運動性、遊走性を高めることは良く知られている。細胞の方向性を持った遊走は炎症性細胞の炎症部位への移動、癌細胞の浸潤、転移のみならず、個体発生や器官の形成にも必須な重要な生命現象である。 我々は細胞内骨格系の再編や遊走に関与する分子としてWASP及びWAVEファミリー蛋白質を採り、アクチン重合への役割を解明してきた。これらの分子は全て、C-末にVCA(verprolin, cofilin-like, acidic)領域を持ちV領域にG-アクチンを結合し、CA領域にArp2/3複合体を結合させアクチンの核化、重合を促進する。一方、N-末側にはこれらの分子を調節する蛋白質が結合するサイトが存在する。N-WASPはWIP, WISH, Cdc42やPIP2と結合し,WAVEはIRSp53と結合することで,VCA領域が露出する。その結果、Arp2/3複合体が結合、活性化されることで、アクチンの重合が促進される。N-WASPはCdc42の下流にあって糸状仮足の構築に関わり、WAVEはRacの下流にあって葉状仮足の形成に関わると考えられている。細胞が遊走する際の先端部においてこれらの蛋白質は活性化され、糸状仮足、葉状仮足を生じて、細胞に推進力を与える。
|