研究概要 |
神経ネットワークの機能と制御、並びにグルタミン酸受容体シグナル伝達系の機構に関し以下の事実を明らかにした。 1.イムノトキシン標的細胞破壊法を用い基底核のアセチルコリン神経細胞を特異的に除去することに成功し、基底核の神経回路においてはドーパミンとアセチルコリンが拮抗的に作用し基底核の神経伝達を正負に調節し運動のバランスを制御していること、さらに測座核アセチルコリンはコカインによる神経可塑性を制御していることを明らかにした。以上の結果はパーキンソン病、薬物中毒の作用部位である基底核、測座核の新しい制御機構を明らかにしたものであり、パーキンソン病、薬物中毒治療の新しい方向性を示すものである。 2.上記細胞破壊法を用い、網膜のstarburst cellが光の動きに対する方向選択性、視運動性眼振を決定していることを明らかにし、網膜神経回路においてstaburst cellからのGABAとアセチルコリンの物の動きの情報を統合する上で必須の役割を果たしていることを示した。 3.パラアルブミン陽性・GABA神経細胞にヒトインターロイキン2受容体/GFPを特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製することに成功した。 4.代謝型グルタミン酸受容体mGluR1,5に結合する新規蛋白質tamalinを同定し、tamalinはGTP交換促進因子と複合体を形成し、mGluR1,5の細胞膜分布を促進することを明らかにした。 5.mGluR1,5のアダプター蛋白homerlaがNMDA受容体/Ca^+/MAPキナーゼ細胞内情報伝達系を介してmRNAレベルで誘導されることを明らかにした。 6.グルタミン酸受容体のグルタミン酸結合部位の結晶化と三次構造の解析に成功した。本成果はG蛋白共役受容体のリガンド結合三次構造を初めて明らかにしたものである。
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