FACS(fluorescence activated cell sorter)とモノクローナル抗体を用いた精度の高い細胞分離法により、前年度までにマウス胎児肝臓から肝幹/前駆細胞画分であるc-Kit-CD49f+CD29+CD45-TER119-細胞を選別・回収する技術を確立していた。本年度は、肝幹細胞のさらなる純化を進め、c-Met+c-Kit-CD49f+/lowCD29+CD45-TER119-細胞中にさらに限定して肝幹細胞が存在することを明らかにした。そして、このc-Met+c-Kit-CD49f+/lowCD29+CD45-TER119-細胞は、多分化能を維持したまま増殖可能で自己複製能を有していること、膵細胞や腸管上皮細胞など他の細胞系列の細胞へ分化する可塑性を有していることなどが明らかとなった。これらのc-Met+c-Kit-CD49f+/lowCD29+CD45-TER119-細胞が有する特性は、この細胞が真の多能性肝幹細胞であることを如実に示しており、今まで概念としてしか捕らえられていなかった肝幹細胞の実体を初めて明らかにしたという点で、幹細胞生物学的に意義の深い成果であったといえる。また、応用科学的側面からは肝幹細胞を純化・回収し操作を加えることが可能となり、今後の臨床応用への基盤が確立されつつあるといえる。
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