研究分担者 |
越永 守道 日本大学, 医学部, 助手 (30267067)
紺野 公明 日本大学, 理工学部, 教授 (50059606)
山本 隆充 日本大学, 医学部, 助教授 (50158284)
深谷 親 日本大学, 医学部, 助手 (50287637)
加納 恒男 日本大学, 医学部, 助手 (40277413)
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研究概要 |
パーキンソン病の症状改善を目的として視床下核刺激をおこなった症例の中で、副作用のために十分なlevodopaが投与できない群(I群:levodopa-equivalent dose<LED>でO-400mg/day、off periodでHoehn-Yahr Stage III-V、7例)と、十分量のlevodopaを投与している群(II群:LEDで500-990mg/day、off periodでHoehn-Yahr Stage IV-V、7例)について、最適の薬物療法を継続した状態で、視床下核刺激のblinded evaluationを施行した。視床下核刺激は、I群ではtremor,rigidity,akinesia,gait subscoreのいずれにも効果を認め、1例を除いて、H-Y stageでIV-Vの時期を認めないまでに改善した。II群もtremor,rigidity,dyskinesia subscoreで効果を認め、H-Y stageでIV-Vの時期は残存したが、daily activityの改善を認めた。しかし、病期の進行とともにlevodopaに反応しなくなった症例では、tremor,rigidityの改善を認めたが、daily activityの明らかな改善は認められなかった。 個々の症状についての検討では、STN刺激はtremor,rigidity,akinesia,gait subscoreの改善を認めた。また、tremorとrigidityは、levodopaの投与量にかかわらず両群で改善を認めた。しかし、akinesia,gait subscoreはlevodopa少量投与群で統計学的に有意の変化を認めたが、levodopa多量投与群では有意の変化を認めなかった。これはlevodopa多量投与群にはlevodopaに対する反応が著しく減弱した症例が含まれているためで、視床下核刺激でakinesia,gait subscoreの改善を認めるためにはlevodopaに対するある程度の反応性が残存している必要があるものと考えられた。 さらに、tremor,rigidityとakinesia,gait subscoreの間で症状の改善に差が認められた事実は、これらの症状の改善が異なったメカニズムによって出現している可能性が示唆される。STNの腹側にcathode電極、視床下核の背側のForel H2野近傍にanode電極を留置し、双極刺激する私ども方法は、STNのみならず周辺組織も同時に刺激されているものと考えられ、これが症状によって異なった改善度を呈する原因の一つと考えられる。今後、長期フォローアップの結果を明らかにするとともに、STN刺激によって出現するSTNならびに周辺組織における神経機構の変化についての検討を行う予定である。
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