泌尿生殖器腫瘍における患者の個別性を目指した分子診断法の開発と標準化に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12307033
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 筧 善行 京都大学, 医学研究科, 助教授 (20214273)
• 研究分担者: 香川 征 徳島大学, 医学部, 教授 (40035738) ; 守殿 貞夫 神戸大学, 医学部, 教授 (30030935) ; 小川 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (90260611) ; 賀本 敏行 京都大学, 医学研究科, 助手 (00281098) ; 内藤 誠二 九州大学, 医学部, 教授 (40164107)
• キーワード: 分子診断の標準化 / RT-PCR法 / SNP解析 / Uroplakin / CD44 / MMP / VEGF / p53機能解析

研究概要

自然排泄尿サンプルにおけるRT-PCR法を利用した分子診断の標準化の一環として、CD44のalternative splicing variantで尿路上皮癌において強発現しているCD44v8-10のCD44sに対する相対的発現比率を算出し,同比が表在性尿路上皮癌の再発および浸潤性尿路上皮癌の転移に対する予知マーカーとして有用であることを明らかにした。また,表在性膀胱癌組織におけるMMP-9およびTIMP-2 mRNAの強発現が膀胱内再発の有用なマーカーとなることを明らかにした.一方、泌尿器癌の予後因子として信頼性のある新たな分子マーカーの開発・検討を進めた。その結果、腎細胞癌におけるactive MMP-2の発現量、MMP-2のactivation ratio、腎癌患者の血清HGF値、膀胱癌の悪性進展におけるPDECGFおよびSPARCの高発現、VEGF isoformの特徴的なdistributionなどが、予測マーカーとして有望であることが判明した。また、膀胱癌における膀胱内注入療法後の再発の予後因子として、MDR1遺伝子のプロモーター領域のメチル化の程度が関連することを明らかにした。膀胱癌などの尿路上皮癌では癌抑制遺伝子p53の機能喪失は悪性進展や抗癌剤耐性と関連する可能性が高いが、半減期延長を指標とした蛋白レベルでの解析結果と遺伝子変異を指標とした解析結果に不一致が見られ、また遺伝子変異の位置によっては本来の機能が維持される可能性も指摘されていた。この問題を克服するため、膀胱癌組織由来RNAを材料とした、酵母を使ったp53のfunctional assayを確立した。日本人の前立腺癌のなり易さとステロイド合成に重要な酵素であるCYP17aの一塩基多型との関連性を明らかにした。尿路上皮癌患者血中のウロプラキン2陽性細胞を指標とした転移診断法を確立し、その臨床的意義を検討した。

研究成果

• [文献書誌] Hara,I.,Miyake,H.,Hara,S.,Arakawa,S.,and Kamidono,S.: "Significance of matrix metalloproteinases and tissue inhibitors metalloproteinase expression in the recurrence of superficial transition cell carcinoma of the bladder."Journal of Urology. (印刷中).
• [文献書誌] Li N.,Kanda K.,Fukumori T.,Inoue Y.,Nishitani M.,kanayama H. and Kagawa S.: "The role of expression of vascular endothelial growth factor isoforms and platelet-derived endothelial cell growth factor in bladder cancer."Urologic Oncology. 5. 1-6 (2000)
• [文献書誌] Tada Y,Wada M,Kuroiwa K,Kinugawa N,Harada T,Nagayama J,Nakagawa M,Naito S,Kuwano M: "MDR1 gene over expression and altered degree of methylation at the promoter region in bladder cancer during chemotherapeutic treatment."Clinical Cancer Research. 6. 4618-4627 (2000)
• [文献書誌] Lu J-J,Kakehi Y,Takahashi T,Wu X-X,Yuasa T,Yoshiki T,Okada Y,Terachi T,Ogawa O: "Detection of circulating cancer cells by reverse transcription-polymerase Chain reaction for Uroloplakin II in peripheral blood of patients with urothelial cancer."Clinical Cancer Research. 6. 3166-3171 (2000)
• [文献書誌] Habuchi T,Liqing Z,Suzuki T,Sasaki R,Tsuchiya N,Tachiki H,Shimoda N,Satoh S,Sato K,Kakehi Y,Kamoto T,Ogawa O,Kato T: "Increased risk of prostate cancer and benign prostatic hyperplasia associated with a CYP17 gene polymorphism with a gene dosage effect."Cancer Research. 60. 5710-5713 (2000)