研究概要 |
今回の研究で日本人難聴患者の遺伝子解析を行った結果、PDS遺伝子、コネキシン26遺伝子、ミトコンドリア遺伝子、EYA1遺伝子、KCNQ4遺伝子、COCH遺伝子、TECTA遺伝子などの難聴原因遺伝子が日本人難聴患者に深く関与していることが明らかになった。また高頻度で見出される難聴遺伝子として知られているコネキシン26遺伝子変異およびPDS遺伝子に関して、欧米の報告と比較検討したところ日本人難聴患者に見出される遺伝子変異の種類は全く異なることが明らかになった。これらの日本人家系を用いた遺伝子解析のデータベースは、今後、難聴患者の診断、治療、カウンセリングを行なっていく上で重要な基礎データとなると思われる。また今回、共同研究により内耳に特異的に高発現する遺伝子が明らかとなり、日本人難聴家系から新たな難聴の原因遺伝子としてCOL9A3,ATP1A2の各遺伝子が発見された。種々の難聴の原因遺伝子が難聴をおこすメカニズムに関しては、日本人難聴家系に見出されたコネキシン26遺伝子変異を細胞に導入し細胞内局在を観察し臨床型(難聴の程度)と比較検討した。その結果、細胞膜に蛋白が発現しない変異(235de1C)は発現する変異(V37I)に比較し難聴が一般的に高度であることが明らかとなった。したがって遺伝子検索によってある程度難聴の程度が推測できる可能性が示唆された。今後これらの成果を臨床にフィードバックするには簡便な簡便なスクリーニング法の開発が必要不可欠である。今回の研究では多数の遺伝子変異を同時に検出可能なインベーダー法を用いたスクリーニング法の開発を行った。遺伝子診断に伴う種々の倫理的問題に関しては信州大学附属病院遺伝子診療部と共同研究を行い、各難聴遺伝子ごとに遺伝カウンセリングの重要点をリストアップした。
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