研究概要 |
シェーグレン症候群の自己抗原α-フォドリンはT細胞増殖を誘導することからT細胞エピトープを解明し、抗原ペプチドによる治療法の開発を試みた。T細胞エピトープの決定は疾患モデルからT細胞を分離調整し、合成ペプチドとの増殖反応性で解析した。自己抗原のオーバラッピングペプチドを合成し、モデルマウスリンパ節細胞との増殖反応を検討した結果、限られた領域のペプチドに高い増殖活性が認められT細胞エピトープ候補であると考えられた。エピトープ配列に基づいた競合的アナログペプチドを用いて実験的治療を試みた結果、アナログペプチドの皮下投与により病態回復効果が認められ、特異的アナログペプチド投与による新規治療法の可能性が示された(論文投稿中)。シェーグレン症候群モデルにおけるFasリガンドを介した末梢トレランスの維持には病因抗原に依存する経路が存在することを明らかにした(J. Immunol.167:6031,2001)。さらに、自己抗原α-フォドリンは唾液腺上皮細胞のアポトーシスに伴うカスパーゼの活性化によって分断化をうけシェーグレン症候群の病因抗原として機能発現する可能性を明らかにするとともに、その特異的阻害剤により病態発症をブロック出来ることが確認された(J. Immunol.169:1050,2002)。一方、抗原提示細胞における抗原分子のペプチドへの分解とインバリアント鎖の分解にカテプシン群が深く関与していることが知られている。そこでシェーグレン症候群疾患モデルマウスにカテプシンSインヒビターを投与することにより唾液腺・涙腺の自己免疫病変が著明に抑制されたことから、抗原ペプチドのプロセッシング機構を阻止することによって病態抑制が可能であり、本インヒビターを用いたシェーグレン症候群の治療の有効性が示唆された(J. Clin. Invest.110:361,2002)。
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