アデノウィルスベクターを用いたヒト骨形成因子遺伝子の導入による骨誘導

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12307048
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 飯塚 忠彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (80026921)
• 研究分担者: 楠元 貴司 京都大学, 医学研究科, 助手 (10301251) ; 安田 真也 京都大学, 医学研究科, 助手 (50263075) ; 別所 和久 京都大学, 医学研究科, 助手 (90229138)
• キーワード: 骨形成因子 / サイトカイン / 遺伝子導入 / アデノウィルス / ベクター / 骨誘導 / 骨形成 / 感染

研究概要

われわれの現在までのrhBMP-2蛋白を用いた実験では、齧歯類においては旺盛な骨形成を示すものの、霊長類では安定した骨形成を得るには、大量のBMPが必要となるという問題を抱えている。その点、アデノウィルスの感染効率は霊長類の方が齧歯類の約10倍も高く、この問題を解決する可能性を大いに秘めている。
rhBMP-2のcDNAをコスミドベクターへ挿入し、このコスミドベクターと親ウィルスDNA-TPCを293細胞に、リン酸カルシウム法でco-transfectした。調整されたウィルス液を293細胞に作用させ、3回継代し、109PFU/mlの高力価ウィルス液を作製した。高力価ウィルス液を細胞破砕し、塩化セシウム溶液を加え、高速遠沈機にて遠心分離を行った。ウィルスバンドを分取し、バッファー交換後透析した。得られたウィルス液を、TCID50測定法にて力価測定を行った後、完成したウィルス液を超低温フリーザーに保存した。このBMP-2を導入したアデノウィルスベクターを筋芽細胞に作用させ、in vitroでの活性を検定した。
今回作製したアデノウィルスベクターは、筋芽細胞に作用させるごとにより、生化学的(アルカリフォスファターゼ活性、オステオカルシン量)に骨芽細胞への分化誘導、骨形成活性が確認された。
本研究の最終目標が達成されれば、将来臨床でのBMP使用において、非常に有用なものとなり、治療が困難であった骨形成性疾患や骨再建における新しい治療法の開発に寄与すると思われる。次年度以降には、今年度の結果を踏まえ、in vivoでの検定を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Yasunori Okubo,Kazuhisa Bessho, et al.: "Osteoinduction by Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2 at Intramuscular, Intermuscular, Subcutaneous and Intrafatty Sites."International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 29. 62-66 (2000)
• [文献書誌] Yasunori Okubo,Kazuhisa Bessho, et al.: "Osteoinduction by Bone Morphogenetic Protein-2 via Adenoviral Vector under Transient Immunosuppression."Biochemical and Biophysical Research Communications. 267. 382-387 (2000)
• [文献書誌] Yasunori Okubo,Kazuhisa Bessho, et al.: "Effect of Elcatonin on Osteoinduction by Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2"Biochemical and Biophysical Research Communications. 269. 317-321 (2000)
• [文献書誌] Kazuhisa Bessho,Yasuzo Konishi, et al.: "Bone Induction by Escherichia Coli-derived rhBMP-2 Compared with Chinese Hamster Ovary Cell-derived rhBMP-2"British Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 38. 645-649 (2000)
• [文献書誌] Yasunori Okubo,Kazuhisa Bessho, et al.: "Osteogenesis by Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2 at Skeletal Sites."Clinical Orthopaedics and Related Research. 375. 295-301 (2000)
• [文献書誌] Kenji Kusumoto,Kazuhisa Bessho, et al.: "The Effect of Blood Supply in Muscle and an Elevated Muscle Flap on Endogenous Tissue Engineered Bone by rhBMP-2 in the Rat"Annals of Plastic Surgery. 45. 408-414 (2000)
• [文献書誌] 別所和久,飯塚忠彦: "先端医療シリーズ・歯科医学1,歯科インプラント"先端医療技術研究所. 447 (2000)
• [文献書誌] Kazuhisa Bessho,Joo L.Ong, et al.: "Biomaterials and Bioengineering Handbook"Marcel Dekker, Inc.. 920 (2000)