アデノウイルスベクターを用いたヒト骨形成因子遺伝子の導入による骨誘導

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12307048
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 飯塚 忠彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (80026921)
• 研究分担者: 吉田 和也 京都大学, 医学研究科, 助手 (90263087) ; 安田 真也 京都大学, 医学研究科, 助手 (50263075) ; 別所 和久 京都大学, 医学研究科, 助手 (90229138)
• キーワード: 骨形成因子 / サイトカイン / 遺伝子導入 / アデノウイルス / ベクター / 骨誘導 / 免疫抑制 / 感染

研究概要

骨形成因子を蛋白の状態で用いる場合、霊長類では安定した骨誘導を得るには大量の骨形成因子が必要となる。この問題は臨床応用を考えた場合、大きな問題となる。その点、アデノウイルスは霊長類で特に感染効率が高く、アデノウイルスベクターを用いた骨形成因子の遺伝子導入法は、この問題を解決する可能性を秘めている。
われわれは前年度までに、骨形成因子発現アデノウイルスベクター作製に成功し、in vitroにおいて筋芽細胞の骨芽細胞への分化誘導、骨形成活性を確認し、in vivoにおいてもヌードラット筋肉内での大量の骨誘導を確認した。今年度は免疫抑制剤を全身投与した一時的免疫抑制ラットでの骨誘導を確認した。また経時的な生体内での骨誘導過程における骨形成因子の存在状態、免疫反応の状態を詳細に観察し、本アデノウイルスベクターの臨床応用の可能性について、検討を加えた。その結果、より臨床使用の容易な手法として、アデノウイルスベクターによる免疫反応を弱めるような生体材料の使用、局所のみへの免疫抑制剤の使用での骨誘導実験を施行し、いずれの手法でも骨誘導の得られることを確認した。生体材料の使用に関しては、以前よりわれわれの骨形成因子担体として使用していたコラーゲンで効果の得られることが分かったが、骨誘導量は免疫抑制剤使用での骨誘導と比較し、少量で形態もコントロールし難いという問題が残存している。免疫抑制剤の局所投与では、全身投与の場合と比較し、少量の免疫抑制剤で有効な骨誘導が得られることが分かり、今後臨床応用に際し、一手段として有効なことが示唆された。
本研究では有効かつ安全な骨形成手段として考えた骨形成因子発現アデノウイルスベクターを作製することに成功し、本アデノウイルスベクターの臨床応用への可能性について種々の検索を行った結果、将来的にこのアデノウイルスベクターを利用した骨形成因子の遺伝子導入法が、有用であることを確認した。

研究成果

• [文献書誌] Junya Sonobe, Kazuhisa Bessho, et al.: "Bone Induction by BMP-2 Expressing Adenoviral Vector in Rats under Treatment with FK506"Journal of Musculoskeletal Research. 6. 23-29 (2002)
• [文献書誌] Kris Partridg, Kazuhisa Bessho, et al.: "Adenoviral BMP-2 Gene Transfer in Mesenchymal Stem Cells : In Vitro and in Vivo Bone Formation on Biodegradable Polymer Scaffolds"Biochemical and Biophysical Research Communications. 292. 144-152 (2002)
• [文献書誌] Kazuma Fujimura, Kazuhisa Bessho, et al.: "The Effect of Fibroblast Growth Factor-2 on Osteoinducing Activity of Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2 in Rat Muscle"Archives of Oral Biology. 47. 577-584 (2002)
• [文献書誌] Shinji Kaihara, Kazuhisa Bessho, et al.: "Effect of FK506 on Osteoinduction by Recombinant Human Bone Morphogenetic Protein-2"Life Science. 72. 247-256 (2002)
• [文献書誌] Daniel Howard, Kazuhisa Bessho, et al.: "Immunoselection and Adenoviral Genetic Modulation of Human Osteoprogenitors : In Vivo Bone Formation on PLA Scaffold"Biochemical and Biophysical Research Communications. 299. 208-215 (2002)
• [文献書誌] Shinji Kaihara, Kazuhisa Bessho, et al.: "Over Expression of BMP-3b Using an Adenoviral Vector Promote the Osteoblastic Differentiation in C2C12 Cells and Augment the Bone Formation Induced by BMP-2) in Rats"Life Science. 72. 1683-1693 (2003)
• [文献書誌] Kenji Kusumoto, Kazuhisa Bessho: "Advances in Skeletal Reconstruction Using Bone Morphogenetic Proteins"The World Scientific Publishing Company. 456 (2002)