研究分担者 |
木村 哲也 理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員
渡辺 恵 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (80302610)
川原 茂敬 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (10204752)
松尾 亮太 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (40334338)
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研究概要 |
ナメクジは匂いと忌避性の味覚(キニジンなど)を連合する嗅覚嫌悪学習を行う.嗅覚学習においては嗅覚中枢である前脳が重要な役割を果たしていると考えられている.本研究では,ナメクジの単離脳嗅覚学習系を用いる生理学的測定と分子生物学的解析により,嗅覚学習のメカニズムを解明することを目的とした.単離脳嗅覚学習において無条件刺激となる味覚神経束の頻回電気刺激は,前脳局所場電位振動の振動数を増大させ,同時に前脳バースティングニューロンの興奮とノンバースティングニューロンの抑制を引き起こした.このことから,学習時には大半のノンバースティングニューロンは抑制されることが示された.さらに触角神経束に高頻度の電気刺激を与えると,前脳における誘発電位が2時間以上の長期にわたって増加する,長期増強が生じることが示された.このような長期のシナプス伝達効率の変化が記憶の固定化のメカニズムを担っている可能性が示唆された. 条件付けの30分前に体腔内にタンパク合成阻害剤であるアニソマイシンまたはシクロヘキシミドを注射すると、条件付け後2日〜一週間目以降の記憶保持に障害が見られ,タンパク合成が嗅覚記憶の長期的な維持に必要であることが明らかになった。そこで次に学習によって発現誘導される遺伝子をPCR-differential display法によって網羅的に探索した。ニンジンの匂いを条件刺激(CS)、苦み物質であるキニジン溶液を無条件刺激(US)として同時に提示して連合させ、対照群にCSとUSを1時間の間隔をおいて提示したものを用いた。再現性のある発現変化を示した8個の遺伝子について部分配列のクローニングを行った。
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