研究課題
平成12年度には助産学生を対象に周産期事象のイメージ化が容易なものと困難なものとを明らかにしたが、平成13年度はこの結果を踏まえコンピュータ上で母体内現象を疑似体験できるソフトウエアの開発を行った。この教材はバーチャルリアリティの技術を用いて周産期の事象を説明し、インターラクティブに学習できるように工夫されている。本年度は、開発した周産期VRソフトウエア教材を用いて、その教育効果に関する実証的研究を行った。調査対象として助産師教育を行っている4年制大学15校・110名、短期大学4校・66名、専門学校4校・85名の計23校・261名の協力を得た。これらの対象を実習前にVRソフトウエアの視聴を行ったAグループと実習後に視聴を依頼したBグループに分け、Aグループは視聴前後と実習後、Bグループは実習前と実習終了後の視聴前後にアンケート調査を行った。調査項目は腹腔内と胎児の関係、分娩開始、分娩中、分娩介助技術に関するものの計40項目に対して、「できない」〜「よくできる」までの4段階評定法で回答を求めた。その結果、全ての項目で視聴後にイメージ化が促進されたと回答され、Aグループでは特に大きな効果がみられた。子宮と胎盤の位置関係、胎児娩出後の子宮、胎盤剥離と子宮収縮の状況、人工破膜の方法などに視聴前後の差が大きく、可視化や触診が困難な事象の理解を深めたことが示された。また、大学、短期大学、専門学校ごとに視聴前後のイメージ化の程度を比較したところ、大学生では特に分娩介助技術を中心とした手技に視聴前後で大きな差が認められ、知識の獲得のみならず、履修すべき助産の技術のイメージ化を図ることができ、実習時間の限られたカリキュラムのなかで有用な学習教材になると思われた。これらの結果から、本VRソフトウエアが学生の子宮内現象のイメージ化を促進し、教材として有用性が高いと確信した。
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