研究課題
基盤研究(A)
本研究は妊娠経過に伴う胎児の発育過程と胎内環境、分娩機転、胎盤剥離機転、異常分娩時の母児の状況等を可視化できる三次元的な教材の開発を試みたものである。平成12年度には、その基礎的データを得るために助産学教育を受けた学生が講義・演習・助産実習を通して周産期の事象をどの程度イメージ化できているのか、また、イメージ化が困難な現象にはどのようなものがあるのかを明らかにし、さらに現行の教育背景との関連を検討することを目的に自記式質問紙調査を実施した。平成13年度はこの結果を踏まえ、コンピュータ上で母体内現象を可視化し、疑似体験できる教育教材の開発を行った。さらに平成14年はこの教材の教育効果に関する実証的研究を行った。可視化する方法としては、バーチャルリアリティの技術を用いて周産期の事象を擬似的にコンピュータ上で作成し、インターラクティブに体験できるようにした。すなわち、母体腹壁、子宮、骨盤、膣壁などを三次元的にモデル化し、これらの器官を正中で左右に分け、それぞれ半透明、透明に表示することを可能にし、さらにマウスを用いて視点を指示し、周産期の事象を直視下で任意の方向から観察できるようにした。さらに、分娩の進行状況、分娩介助なども、納得できるまで反復学習でき、周産期のさまざまな事象が極めて容易に理解できるように工夫した。可視化した具体的な内容は、胎児・母体循環、胎児の運動、胎位・胎向・胎勢、分娩経過(子宮収縮と胎児環境、胎児心拍数モニタリング、破水、胎児の回旋、軟産道、胎盤剥離)などである。この教材は、CD-ROM形式で配布され、汎用のパソコン上でこのソフトをインストールすれば簡単に作動させることができる。母性看護学・助産学教育に広く使用することが可能であり、平成14年度の調査からも、本VRソフトウェアが学生の子宮内現象のイメージ化を促進し、教材として有用性が高いことが示された。
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