研究課題
本研究は4ヵ年度継続の2年度目にあたり、初年度に実施した保存処理後遺物の変化の有無、保管環境などの調査票を送付し、回答を得た全国の主な機関を中心に調査を行った。調査は昨年度同様に計画した調査地城を勘案ながら緊急に調査すべき機関から、現地調査を進めた。現地調査した展示・収蔵施設を含めた保管環境や遺物に関する情報(処理年度・処理方法・処理機関・具体的な変化の状況など)のデータや現状写真などとあわせて、データベース化を計った。今年度の現地調査で変化の生じている遺物の要因やサンプリングによる分析結果をみると、1、保存処理方法 金属製品における脱塩工程の実施の有無、実施した場合の脱塩期間 木製品における白色粉体の発生、表面のくすみ 2、保管環境 空調設備が配備されながらパックなどを行い通気性の無い状態での保管 3、取扱い 接着・復元部の点検を行なわずに不用意な取扱いによる折損及び破損 4、その他 有機酸と絵具のカルシウム塩との反応、含浸及び塗布した樹脂自体の劣化などが目立ったが、1については保存処理担当者側の技術レベルとモラルと考えるが、データを集積していく中で2・3の要因が占める割合が高く資料管理担当者の問題意識が指摘出来る。近年開発された処理方法の長期安定性も調査しているが、1.4の要因とあわせて2・3の要因とが重複することが多く、さらに少しでも多くの保存処理済遺物のデータ量を増すことが、その要因や実態の把握をより正確なものとすると同時に、文化財の保存処理を実施するうえで1・4は当然であるが、「2、保管環境」や「3、取扱い」についての詳細な調査を行うことで、保存処理後遺物のさらなる実態を把握するととも、改善策により延命措置を模索することが急務と考える。
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